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歴史にとどめを残せ渡辺財政-2

頭の痛い景気対策

渡辺大蔵大臣が人気取りを始めたら終りだよ。収拾つかなくなりますよ。

かつて、あれだけの不況にぶつかった時、建設国債を発行して、景気に活を入れたことは、それなりの意義のあったことだと思う。昭和50年から始めた赤字国債、これも税収が落ち込んだものだから発行したが、これは要するに、消費的経費を借金でおぎなう、ということであり、家庭で言えば、早い話、着物を買ったり、帯買ったり、反物買ったりの、ゼイタクをするために、借金で生活を派手にやろうというわけですね。借金で生活を向上させようというわけですから、たとえば、過去7年間、昭和48年から現在迄、税収は2倍にしかなってない。ところが、社会保障は3.9倍になってますよ。

飯塚なるほど。

渡辺防衛をどうだ、こうだと言うが、防衛費は2兆2,000億にすぎない。ところが、社会保障費は8兆2,000億にふくらんでいる。スタートの時点での予算は同じ位だったんだ。それに、文教がかなりのスピードで伸びている。従って、分りやすく言うと老人の福祉年金というものは7年前は5,000円だったのが、今年は2万2,500円で、財源の一部は借金でしょう。これは4.5倍。厚生年金も2万2,000円だったんです。それが20%政府負担、それが毎回毎回改善されて、今年はヨーロッパ並みで、ドイツに大差ないし、フランスやイギリスより、遙かに良いわけですよ。10万円年金、支給額が毎月1人当りですからね。そうすると、これは4.5倍ですね。医療の無料化にしたって、みんな財政の苦しい中で、給付率の向上をはかって来たわけですね。だからこそ、国民の生活の向上につながったことは間違いありません。

だが、こんなことをいつまでも続けて行くということをやると、もうすでに、国債の引受け手がないということですよ。

本誌当然でしょうね。

飯塚まったく。

渡辺私は一番マイったことは、景気対策ですなあ。公共事業を拡げるといったって、財源がない。問題は国債の増発は出来ないとなれば、金利を引下げねばならない。だから、公定歩合を2回にわたって下げた。大企業の短期プライムのレートは良くなるが、中小企業の借りる金が下るわけではない。預金金利を下げなければならない。預金金利を下げると公定歩合並みに1%下げて、借出し金利も1%下げたいと思ったところが、さあ困った、1つは郵便局に反対され、頑張られちゃった。0.75%以上は下げられませんと頑張られちゃった。だが、郵便局が1%下げに応じますと言ったら、一番困るのは大蔵省なんだ。

飯塚なるほど

渡辺なぜなら、国債の金利も下げるんでしょうなと言われたら、国債売って金を集めるのも、郵便局から金を集めるのも、金を集めるということに関しては同じだから、従って、国債も下げろと言われると大変なんだ。国債だって、0.5%下げるのは容易なことではない。市場情勢から見て、利回りから計算するとなるとむずかしい。そのむずかしいのを0.5下げたんだ。ところが、利回りはずっと落ちてしまうということで、更に、発行価格も98円に1円下げた。それでも逆に今度は国債の利回りが良くなったと言うのだ。価格がロクイチ国債、価格が暴落しちゃって、利廻りが10%になったと言うんだなあ。人意的に作っても駄目なんだ。結局はですぎなんだ。国債の利回りが良ければ、国債の金が集まるかもわからんが、そうすると民間が怒るわけだ。結局、今回は3月水準に降すということで下げて貰った。これから金利を下げるという場合には、国債が下げられないのだから、長期金利は下げられないのですよ。

飯塚なるほど。

渡辺自分で国債出しすぎておって、自分で買い取らねばならないとは。

本誌大変な話ですね。

渡辺現実は、そうしないと民間の資金が圧迫されちゃって、どうしようもないことになるんですよ。だから、結局、国債を減らす以外に経済の立て直しは出来ないよ。国債を減らすというのは、麻薬患者に、ブッテおった麻薬の量を減らすのだから、抵抗がありますよ。何故なら、国債を減らすということは、それだけ財源、収入が減るということでしょう。それは、一度、贅沢した生活を切りつめて、昔の質素な生活に戻れということは、ブウブウという声が一勢に上る。みんな不平不満の声となって来る。

本誌まったくその通りだ。

渡辺だから、まず、収入を増やすことより、生活を切りつめなさい。今までのパターンで自然増収を考えたいし、自動的に給与改善等をみんなやって来たわけでしょう。これは、当然増税といわれる経費だってブレーキをかけるということを今やっているわけですね。

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