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命懸けの行・財政改革-4

「犠牲の平等」は財政学の原則

中曽根そうです。で、どういうふうにやるのか。コトの性格によって、濃淡の度合いをつけてやるのか。その他の方法がありうるか、というかたちで概算し、各省庁ごとに、今年のあなたのところはこれこれ。総額、いくら。あるいは渡しっきりにしちまって、あとの中味については、この基準でもって、それぞれ各省庁でお決め下さい、というかたちにならざるをえんのじゃないかと思いますねえ。

飯塚うーん。

中曽根ええ。ですから、政務調査会の各部会長さんには、「今度は、あなたがたが“主計局長”ですよ」と言ってるんです(笑い)。

飯塚あはははは……。

中曽根「あなたがたが各省庁の“主計局長”ですから、お願いしますよ」と(笑い)。

その場合、大蔵省は全休の均衡とバランスをとり得るように報告を受け、相談を受けてやるように、と。また、地方も、それに準じてやって頂くと、そういうことです。

その中に、やはり補助金の問題が……。

本誌ついこの間、第2臨調の丸山委員(総評副議長)から、行革での“補助金カット”については、「福祉と教育は対象から除外せよ」という意見書が提出されたそうですね。

中曽根ええ、ええ。

ですが、56年度の一般会計予算の補助金は、総額14兆5,000億円です。このうちの6割の8兆1,000億円は、総数3,500のうちの16件数で占めているんですね。この中で一番大きいのが「義務教育費国庫負担金」というやつ……。

本誌つまり、学校の先生たちの人件費……。

中曽根そうです。小・中学校の教職員の人件費をまかなうもので、これがざっと2兆1,000億円。つづいて国民健康保険関係の「療養給付費補助金」が約1兆8,000億円、「生活保護費補助金」が約1兆円というふうにつづくわけですね。

しかし、不公平税制の是正ということ、公平という面からみるならば、これも考えざるを得ないのではないかと、そういうことも言っているわけです。

飯塚いまさき、大臣が「犠牲の平等」と言われた言葉ですがね、これはイコール・サクルファイズという財政学上の専門用語ですね。世界の財政学の、税制に関する原則なんです。ところが、それが日本では税制面では実現されていない。

ただ単に、支出するほうをカットする点だけに、その原理・原則をもってくるというのは困るんであって、国民から税金を集める時にも、みなイコール・サクルファイズの理念に基づいてやってもらわなければ、いかんのです。

中曽根大事なことですねえ。

飯塚はい。その補助金カットの問題と同様な問題が、いま、1つ起っておりますね。

中曽根それは、なんですか。

飯塚いやね、いま、例のグリーン・カード制度を“廃止”しようという勢力を形成しようとする国会議員のかたがたがおられるが、これはね、一部の悪質な脱税者の幇助(ほうじょ)をはかられるかたがたですから、われわれとは相容れないんです。

本誌つまり、不公平税制を是正しようというプランニングの1つとして出てきたグリーン・カード制を、潰そうという動きがあるわけですね。

中曽根そのグリーン・カードの問題をめぐる動きについては、その推移を見ておりますけど、あれをやる必要性はあるんですね。

ということは、いま、日本の総人口が1億1,000万人以上であるのに対して、(預貯金の)通帖は2億ぐらいあるとかですね。そういうようなインチキが厳然としてあることは事実だから、これを退治しなければならん。そういう必然性からグリーン・カード制というものの発想がでてきた、と。

しかし、その一方において、経済というものは生きものであるから、なにも、脱税を奨励するわけではないけれども、例えば、家庭の主婦のヘソクリなんてなものはね、亭主に黙って、内緒に持っているところに意味があるんで、それがご主人にわかってしまったら、これはもうヘソクリの意味がなくなる。

ちっぽけなようなことですがね。匿名性というか、そういうものが貯蓄心をそそるようなことになるのも事実なんであって、そういう奥さんがたのヘソクリみたいないじらしいものは助けてやり、悪いことをする“大ネズミ”をいかに退治するかと、そういう論議はあるようですね。

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