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命懸けの行・財政改革-5

問題の解決は長期的視野で

飯塚そうです。ですけれども、今回のグリーン・力ード制度は、普通の預金には触れないんですね。一般庶民の通知預金とか普通預金とかは金利が割に安いので、大蔵省としても、それには手をつけようとしていない。これはグリーン・カードのワク外なんですね。

一番問題なのは、郵貯というものを、脱税のメディアとして使っているということ。そこに問題があるんですよ。

中曽根もしもそういうことがあるならば、大問題なんで、それは退治しなきゃあいけませんですね。

飯塚そういうことです。ですから、私どもはグリーン・カード制度反対論者に対して、“静かなる宣戦布告”を行なうと、こういうパンフレットを作っているんです。

大臣も、おひまな折りに、どうか読んでみて下さい(笑い)……。

中曽根ええ、読んでおきましょう(笑い)。

飯塚この問題はひとまず置くとして、前回の対談で、行政のあり方については長期的な1つの哲学をもった、行政府はいかにあるべきかという角度で問題にすべきであって、例えば財政が赤字であるなどというのは瞬間的な問題である、というような大臣の位置づけ、これは私は正しいと思うんです。

ただし、問題はですね、日本と先進諸国の行政の状態とを見比べたときに、非常に特色が目立つわけですよ。

例えば、日本の地方自治体は過剰人員をかかえすぎているけれども、アメリカあたりでは人口が10万人ぐらいの都市だというと、せいぜい役人というのは30人ぐらいです。

これに比べ、日本は“過大なる負担”を自ら求め負担をかぶっているという面があるから、それを減量化するということは重大な問題だし、これはまた行政とはいかにあるべきかという、長期的視野の上に立った問題であらなければならないわけですね。

中曽根そうですね。

飯塚はい。しかし、そう考えた時に、大臣もおっしゃられたような支出のカットをね、いつまでも続けていくわけにはいかないと思うんです。やはり、財政需要膨張の原則、これが財政の原則だというのが世界の通説なんですが、結局、財政というものは膨張していくんだということになると、その膨張に見合っていくには、大臣がいわれた“犠牲の平等”を貫きつつやりていかねばダメだということなんですね。

そういう時に考えねばならないのは、日本の現在の“主力”はなんであるかといえば、これはサラリーマン階層と誠実真剣な中小の企業経営者たちです。それらが日本の主勢力なんですね。

中曽根そうですね。

飯塚ええ。で、その主勢力を愛護する。そういう人びとに、国会や政治に対して憎悪感を抱かせないというだけのものを作っていくことが必要だと思うんですが、そのためには、悲劇的なまでに立ち遅れてしまった税制の不公平性、これを打破しなければ絶対にダメですね。

その意味では、いまの所得税法の第120条というのは、国家構造上からみた脱税容認体制の法条であるということになるんです。

本誌それは、具体的に、どういう条文なんですか。

飯塚これは、多くの大蔵省の役人も税理士たちも気がつかなかったことですが、簡単にいえば、事業所得、山林所得、庶業所得というような、所得のある者が、自ら所得を算出して、その所得から雑損控除とかいろんな控除を差し引き、残った額に対して所得税法89条の税率を掛けて税額を出す。

つぎは、その税額を配当控除金額と比べ配当控除金額よりも、算出した税額が大きいということが認識されたその時点で、その超過した部分について申告をする義務が発生するわけですね。

そうしますとね、一般の納税者は、あのむずかしい所得額の計算のやり方を全部知っていて、税理士なんてものはいらないのかというと、そんな簡単なものじゃないんですよ。

本誌それはそうでしょう……。

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