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これからの税務行政は租税正義をめざせ-2

租税正義の実現をめざして

本誌矢澤局長は国税職員に「租税正義の実現をめざすことが、民主主義の基本である」という格調高い方針を述べられたと聞いて感銘しているのですが……。

飯塚それは立派だ。すごい……。

私達はいま、税理士の質的向上をめざして90時間というきびしい研修を重ねていますが、その研修に配下の法人税課長を講師に派遣して下さっているという現実をみても理解できますね。

税理士が質的に高い申告書を作成するのに、国税当局からの協力を得られることは重要な意味があります。

矢澤皆さんが真剣に租税正義の立場から努力しておられるのに協力するのは当たり前のことですよ。新しい税務行政の方策をさぐる必要のある時代に入っていますからね……。

飯塚磯辺元長官の講演も税理士諸君に、大きな感銘を与えています。

矢澤木場さんが磯辺先生の講演を実によくまとめて、出版されていますね。

飯塚今度の『市民の納税意識と適正公平な課税のための方策』も仲々よいでしょう。

矢澤早速、読ませていただきます。我々は、そういう意味ではよき先輩を持っているので心強いです。磯辺先生のこの本や講演は大きな影響を与えますからね。

飯塚立派な人だ。この本はTKC90時間研修の副読本となっていますので……。

本誌ところで両先生にお尋ねしたいのですが、日本と諸外国との職業会計人の社会的な地位のちがいは如何でしょうか?

矢澤公認会計士法に続いて、税理士法などが制定され、日本も次第に職業会計人の社会的地位が定着してきたように思いますね。

飯塚私は第8回世界会計人会議の時に、日本代表として会議に参加したのですが、たまたま会食の時に、私の隣りがイギリスの代表団長、真正面にスペインの代表団長が座っていました。特にスペインの代表が大きな勲章を胸にいっぱい付けている。それで「勲章がたくさん付いているがあなたは偉いのか」と聞いたら、隣りのおともの人が答えて「大蔵大臣です」と来た。これには恐れ入りました。公認会計士で現職の大蔵大臣(笑)。

本誌日本にすれば渡辺前大蔵大臣が税理士というようなもので……(笑)。

矢澤お隣りの紳士は?

飯塚右隣りのイギリス代表団長が胸に付けている勲章はナイトの勲章なんですね。そこで私は「お前様の先祖がもらったのか」と聞いたら、目をむいて「冗談じゃない。俺が首相立ち会いの上で、クイーンから直接つけてもらった」と胸を張っていました(笑)。

本誌どうやら日本の職業会計人の地位はまだまだという感じですね。

『バンガード』12月号に載った小室直樹さんの発言「本音を語る」にあった「日本の公認会計士は被告が裁判官をやとっているようなものだ」という意見なんか……。

飯塚ああ。あれは面白かった。

特に矢澤局長さんは納税者の申告書の水準が良質なものになることを期待しておられると思うのです。

矢澤その通りですよ。

飯塚イギリスではそのような方向にきていますね。ドイツも実現していますね。

矢澤飯塚さんの主張する「虚偽の申し立てをしたら罰せられるべきだ」という裏打ちが、イギリスにはありますね。

日本では「イギリスでは税務申告は会計士にまかせればOKだ」なんて簡単に考えているようだが、イギリスの会計士に課せられている責任は重いですね。それだけに社会的地位も高いのでしょうが……。

飯塚それはイギリスの会社法に書いてある。1976年の会社法の19条に経営者が虚偽の書類を見せた場合、または相手を誤解にみちびいた場合には2年以内の懲役、400ポンドの罰金となっている。きびしいですよ。

矢澤ところで飯塚会長が試みている90時間研修の中から、適格者の見通しはどうですか。その飯塚会長の自己に厳しい評価からみて……。

飯塚TKC関係の5千数百会計事務所の中で、第1次の適格者は500名くらいだろうと思いますよ。

本誌なかなか厳しいですね。

飯塚いずれにしても正しい税法の制定には立法に当たる議員の意識が変ることが必要なんだが……これが駄目ときている。学者だって、具体的な現場の状況を知らなさすぎる。

矢澤我々の方も、例えばドイツの国税通則法などを読む時に、どうも読む角度が違っているせいか、反省すべき点もあるようですね。どうしても徴収関係ばっかり一所懸命読んじゃうんですね。もっと根本の申告納税制度にかかわる部分に目を向ける必要がありますね。学者先生からもあまり御指摘がなかったし、……今までは。

飯塚ここにケルン大学のティプケ教授の『租税正義』という本があります。昨年出版されたものですが、貴重なことが書かれている。「税法の条文とは、こうあらねばならない」というようなことが論じられている。これは主税局の人々には読んで貰いたいものですよ。

矢澤飯塚会長のドイツ文献は相当の量になりましたでしょうね。

飯塚2,000冊は越えたでしょうなあ。ただ、こちらは民間ですから、権力がないので、世界の税法を勉強して税法理論で武装する以外にないのです。

本誌日本の税法や財政や会計学の先生方には、このような面からのアプローチがないのですか。

矢澤先生方の研究の中にも入っていないようですね。

飯塚勉強してない。驚くべきことだ……。

先般も日本会計学会のパーティーがあって出席したら、私の名札を見て、ある大学の先生が率直に「私達は飯塚先生より勉強していないので恥かしい」と言っていましたよ。

矢澤その先生は大変正直な人ですね。

飯塚蔵書の自慢をしても仕方がないが、ドイツ以外に、イギリス、アメリカ、フランス、イタリアその他の国々の税に関する文献は5,000冊を越えました。

矢澤個人では日本一でしょうね。

本誌大学でも、そこまではないところが多いでしょうね。

矢澤ここらでひとつ、私の方から質問。飯塚会長のその信念のよって来たるところを聞いておきたいですね……。

飯塚私の信念としての基本的な考え方は、基本的人権を守る、自由主義を守る、これが根底にあるんです。

これがくずれたら平和な国家建設の夢はなくなりますよ。だから、この考え方を受け入れない人々とは同志的関係を結びません。

私達は健全な自由主義社会をつくろうとしているからです。従って、目的地の違う人とは一緒に仕事が出来ないわけです。

矢澤立派な方針ですね。感服します。

租税正義実現のためには、是非とも税理士先生方の御協力が欲しいですね。

本誌国家の健全な財政再建のためには、それは不可欠な要素ですね。

飯塚国家が税理士法をつくった意義も、まさにそこにあっただろうと思う。

矢澤飯塚会長のそのような愛国の情が、必ずしも充分、同業者や関係方面に正しく理解されていないかたむきがありますね。

私は、きょう、こうして、じっくりとお説を拝聴して充分理解することが出来ましたが……。

飯塚私の不徳の至すところか、相手が馬鹿なのか、PR不足なのか……(笑)。

本誌あんまり、すさまじいので、理解するより先にびっくりして……(笑)。

矢澤その感じがあるね(笑)。

飯塚イリノイ大学のマウツ教授が「会計人の独立性というのは、自分を雇った人が、場合によっては自分を解約するかも知れない。そうであっても相手に従属しないというのが独立性なんだ」と言ってます。

矢澤同感ですね。企業会計審議会の会長をされている飯野利夫先生を御存知ですか。私の恩師なんですが……。

イリノイ大学に1年ほどいかれてこの春、帰って来られましたが、マウツ教授のことは聞いております。

飯塚飯野先生は会計人の歴史に関する素晴しい本を訳していますね。

本誌両方とも極めて研究熱心な人々だけに、討論すると面白そうですね。

まったく意見が一致して、ざっくばらんに批判し、談論風発とどまるところをしらない、ということになるかもしれませんがね……(笑)。

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