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“第三の開国”に勇気を-4

「日本に高まる風圧と期待」

飯塚日本は経済的に大変な膨張を遂げました。この状態が。いつまで続くか、懸念があります。

大来いいことっていうのは、いつまでも続かないものでしてね(笑)。日本はいまばかに威勢がいいが、やはりそうはいかない事態が出て来るかもしれません。

ただ現状では、日本はまだ先進国的要素と同時に後進国的要素もあって、例えば勤労意欲は旺盛ですね。

本当に豊かな社会になると人間がだんだん働かなくなる。そのちょっと手前じゃないですか。その上に技術はどんどん先進国になるから競争力が強くなってしまったのですね。

飯塚とくに中高年がハングリー精神で、非常に働きますね。

本誌貿易摩擦の報道を見聞きしていると、日本はいまにも世界中から総スカンを食いそうな雰囲気ですが、このままゆけば日本は孤立しませんか。

大来私が昨年暮れに出した本の題は「日本に高まる風圧と期待」というものでした。期待もあるにはあるが、風圧の方もこのままゆけば強くなって、相手が課徴金などの形で輸入を制限する可能性があります。

日本だけが“繁栄の孤島”であるわけにはいかない。相手国の消費者に喜ばれているから輸出が伸びるのは当然だという理屈だけでは通りません。

この前イギリスでこう言われました。「日本はイギリスのオートバイ産業、ドイツのカメラ産業、スイスの時計産業をつぶした。この次はなにをつぶすんだ」と。相手にはそういう感情がある。こちらとしても、場合によってはある程度輸出を自制するというかブレーキをかける必要があります。また合弁をやって向こうにも儲けさせたり、研究開発もできれば共同でやって新しいものを一緒に作ったりね。そうでないと、おっしゃるようにまた四面楚歌になる恐れがあります。

飯塚パリの街を歩いても、びっくりするぐらいホンダのオートバイを売る店が目につきました。

大来良くて安くて使い易く故障が少ないからでしょう。自動車も同じですが……。

革新的技術はまだアメリカやヨーロッパから出るが、それを商品化し実際に生産するとなると日本が強い。相手の便利さを考えて細かいところまで行き届く。これは日本の国民性も関係があるのでしょうね。

しかし、アメリカやヨーロッパにしてみれば、そのため失業者は出る、会社はつぶれるですから、日本よほどほどにしてくれ、ということになります。

飯塚相手がギョッとするくらい思い切った手を打つべきでしょう。例えば関税や規則を全廃するとか。それくらいの措置をとっても、日本の産業は、石油ショックの時のように、りっぱに対応できると思うのですが……。

大来政治家がみんなその気になってくれるといいんですがね(笑)。

明治以来、日本はいつも外貨が不足がちだったから輸出振興、国産品愛用でないと経済が成り立たないと役人も産業界も一般国民も思い込んで来ました。だから「舶来品を買え」と急に言われても転換できない。

しかしいまや輸出したければ輸入しなければならない。それに安くてよいものが外から入れば国民のウェルフェア(幸福)はそれだけふえるわけです。この認識が国民に浸透して保護策は国全体の利益に反するということが常識になれば、かなりやり易くなりましょう。しかし、農業関係などの「保護政策が国のためだ」という理屈が強くて……。

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