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“第三の開国”に勇気を-7

会計、税務でも早急な国際化を

飯塚外国企業の工場を日本にどんどん進出させ、彼らに利益をあげさせるのも、1つの開放策だと思うのですが、それには日本の税金の高さが障害になるでしょうね。

大来近ごろは地方に外国企業誘致の声が上がっていますが、日本全体として従来、そこまで考えていませんでしたね。

やっかいなことは、アメリカの会社が日本でICを造ってアメリカヘ輸出すると、貿易はいよいよアンバランスになります(笑)。

それはそれとして、外国の企業がどんどん日本に来て仕事をするような情勢にする必要はあります。

同時に外国人留学生の受け入れを拡大することも有効です。一昨年、総理に頼まれて私を含め5人の委員会で21世紀に向けての留学生対策を研究し、西暦2000年までに外国人留学生を10倍にふやすべきだと答申しました。

いま日本に来ている留学生は大学、大学院を合わせ1万人ですが、アメリカは30万人なんですよ。

飯塚ほう。随分差がありますね。

大来フランスは11万人、ドイツは5万数千人です。中国が出している留学生はアメリカ1万人に対し、日本は2,000人です。若手の韓国人と話す時、最近は英語でやりますが、中国人と話すのもだんだんそうなるかもしれませんね。

外国から10万人くらいの若者が日本に来て勉強し、国に帰って重要な仕事をする。そういう意味で開かれた日本にすることが必要な時期に来ています。

飯塚おっしゃる通りです。

中国といえば、私たちTKCもシステム研究所に昨年から3人の留学生を受け入れておりますが、中国財務部から5、6人にふやしてくれないかという要望が来ています。

大来ほう。税金関係の勉強ですか。

飯塚いや、コンピューターのソフトと会計学です。

大来中国がいま非常に人材を必要としている分野ですね。

飯塚中国はいま日本の商法、会社法にあたるもの、あるいは税法といった法制を整備しはじめていますが、会計については日本がやっていないことをやっています。

大来ほう。それは?

飯塚「会計記録は適時に行わなければならない」と法律の条文で明記しているのです。

ドイツの場合は現金出納に関してはその日のうちに記載しなくてはならないという規定になっています。現金出納の記載、つまり会計帳簿をありのまま厳密につけるのは、納税の基礎なんです。中国はその考え方を導入しているわけです。

日本はそういう規定がないから、極端にいえば決算期が過ぎて税務調査が来そうだという段階になって1年分の帳簿を作っても合法なんです。そうしたルーズさがいま目にあまる脱税の温床になっていると思います。不思議なことに、それを指摘する学者もいないのです。

大来ほう。

飯塚さらに、脱税が多すぎる原因の1つは、脱税未遂犯の処罰規定がないことです。こんな国はサミット構成国では日本だけです。サミットといえば、先生は外務大臣として、急死した大平首相の代役でベニスにお出でになったこともありましたね。

大来ところで、外国はどうなっていますか。

飯塚アメリカは未遂でも5年以下の懲役、フランスでもそうです。

大来未遂でも証拠はありますか。

飯塚そこで、さきほど申した会計記録が生きてくるのです。「不実記載」で押さえることができます。

大来日本もわかったら追徴金をとるでしょう。

飯塚延滞金、追徴金、加算税などといいますが、それだけです。未遂は罰しませんからね。それで脱税が横行しているのです。

最近、レーガン大統領が思い切った減税案を発表しましたが、アメリカ財務省は減税しても税収は減らないと言っています。その自信は脱税を監視し、税収を上げる条件を整えているからです。

大来なるほど。

飯塚もう1つ日本の企業には、大中小を問わず会計監査人に対する協力義務がないのですが、こんなことは日本だけです。

大来今度また商法の改正がありますが、その時改善されませんか。

飯塚法務省にそれを訴えているところです。現状はまことに困った事態で、公認会計士の懲戒事件は、日本はドイツの10倍もあるのです。

さきほどからの話にもありましたように、経済大国になった日本は、どの分野でも国際的に確立された合理的な考え方、慣行を十分身につけなくては、外国とかみ合ってゆきません。そういう意味で、会計帳簿の厳密な記載、それと連動する脱税未遂犯の処罰、会計監査人に対する企業の協力義務等、早急な改善が必要です。“国際賢人”の先生にぜひお取り上げ頂きたい。

大来ご趣旨は分りましたが、私は“賢人”どころか、貿易摩擦の申し聞き役で手いっぱいでしてね(笑)。

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