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国家百年の計-5
今こそ確立せよ日本の税制

再説――記帳義務に罰則を

本誌「課税の平等実現が根本」という水野局長の明確な方針を、「租税正義」実現を説き続けておられる飯塚会長も心強く聞かれたことと思います。

主税局長をゲストにお迎えしたこの機会に、飯塚会長の税制全般についてのお考えを改めて展開して頂き、水野局長のご意見を伺えればと思います。

水野国会や税調でご高説をしばしば拝聴しておりますが、さしでお話しを伺うのは初めて。是非、率直なお話しを伺いたい。

飯塚最高権威を前に、失礼な言い方かもしれませんが、私から見れば日本の税法は滅茶苦茶です。

本誌幾つか具体的にお話しください。

飯塚沢山ありすぎて、どこからどう話してよいものやら困るけど(笑)、やはり一番基本的な記帳義務の問題から申しましょう。

商法32、33条は記帳を義務づけています。ところが税法はこれを任意事項に改悪している。これは税法が市民の基本法を破壊しているということです。

記帳義務の強化というと、青色申告会の人々から反発がくるという事情はわかります。しかし、そもそも青色申告というのは、戦後の恐ろしい程のインフレで、商人たちは記帳するとインフレ利益に課税されるのを恐れた状況、シャウプ勧告にいう deplorable(嘆かわしい)な状況を克服するための誘い水として実施されたものです。いわば緊急避難的な措置だった。それをなぜいつまでも続けているのか。

水野それは飯塚さんのご意見などを参考に、昭和59年に、所得300万円以上という制限はあるものの、とにかく一般的に記帳してもらうところまで辿りつきました。34年間もかかってですがね(笑)。

飯塚確かに前進です。しかしまだまだです。まず罰則がついていない。

水野罰則がつくならやめてくれ、と大騒ぎになり、結局、罰則は見送られました。しかし、一般規定としては、シャウプ勧告以来の懸案に一応の解決をみたわけです。お話しのように、インフレと闇取引の最中に申告納税制度という近代的な制度を導入したところに若干の無理があったんでしょうね。

飯塚大蔵省当局のそのご努力を評価したうえで、なお申しあげたい。

なぜ「国家の為にこれだけは是非頼む」と更に押せなかったのか。米英独仏どこでも罰則規定があるのに、日本だけがなぜないのか。脱税の大きな温床を放っておいて「財源がない」というのは片手落ちでしょう。

脱税へっちゃらという滔(とう)々たる風潮の中で、憤懣やる方ない思いをこらえきれませんので繰り返し申し上げる次第です。

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