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“税制改革大綱”の誤謬を撃つ-3

記帳義務の規定がないのは日本だけ

飯塚不公平の是正問題ですけど、日本の所得税法241条によると、自営業者が確定申告書を提出しなかった場合、サラリーマンよりぐっと軽く、1年以下の懲役または20万円以下の罰金となっている。そして、何らかの正当な理由があればその刑罰は科さないとなっている。しかも、正当な理由とはの有権解釈規定は与えられていないのだから、これは明らかな「ザル法」です。

他方、サラリーマンだけは、源泉徴収しなかった、または徴収した税金を会社が納入しなかった場合は、所得税法第239条と第240条によって、いずれも3年以下の懲役という激烈な担保がついているのです。これは明らかに税制における不公平の見本と言わねばならない。

加藤「正当な理由がなくて」の9文字を削除し、「1年以下」との文言をサラリーマンと同様に「3年以下」と訂正すべきだとおっしゃるわけですね。

飯塚そうです。何か理由をつければいい、なんておかしい。税金を払うほど所得があるとは思いませんでしたで済んでしまう。

加藤忘れてましたっていうのも正当な理由になるでしょうね(笑)。

飯塚しかし、本当に正当な理由があって隠す人はいないはずですからね、こんな但し書きはおかしいんだ。

アメリカでは1962年に、農民にも強制的に記帳の義務をかぶせた。内国歳入法第6001条にこれがある。それ以前は、サラリーマンと豊民は記帳の義務なしとしていたが、もう20年以上も前に、農民といえども記帳の義務ありとしているわけですね。

ところが、日本では記帳の義務というのは任意なんです。記帳してもしなくてもいいということですからね、驚くべき事実ですよ。

加藤え? 記帳しなくてもいいんですか。企業が記帳しなかったら大変でしょ?

飯塚そんなことありません。

商法第32条に記帳の義務はあります。しかし、日本の税法にはどこにも記帳の義務が書いていない。

加藤本当ですか? それは知らなかった。

飯塚大方の人は気づいておられない。当然あるものと思い込んでおられる(笑)。

はっきり申しあげます。税法上は記帳の義務はありません。記帳していないということをもって罰せられることはありません。

加藤ヘエー、だって私の研究所でさえ、記帳していないと税務署に叱られますよ。

飯塚税務署が怒ったら、ちょっと待ってください。じゃあ、記帳を義務づけている条文をお見せくださいと言えば、返す言葉はないはずですよ。出せないんですから。

加藤そうすると、税務署が調べに来ても帳簿はありませんって言えばいいんですか?

飯塚現行法においては問題ありません。だから私は主張しているのです。健全な国家たるには記帳の義務を税法で明文化しなさいと。現在は記帳するかしないかは自由です。しかし、利益を受けたい人は記帳しなさいというのが青色申告制度なんです。青色の場合は、赤字は繰り越してあげますよとかの“エサ”を与えて、そのエサを食べたければ記帳しなさいといっているわけです。

加藤なるほど、条件付記帳義務というわけですね。

飯塚商法第32条の記帳義務を、税法が青色と白色の申告書提出体制を作ることで、正しい記帳義務を崩したことは、一般法の大原則を特別法たる税法が蹴飛ばして破ったということであり、こんなことは許されることではありません。

シャウプ博士は、敗戦直後の極端なインフレ下で、事業所得者が一般に記帳を避けようとしているという慨嘆すべき状況下にあったので、記帳実施の誘引の手段として仕方なく白色と青色という2種類の申告書提出体制を勧告したのです。従って、その前提状況がない現在においては、記帳を任意としておく理由は全くなく、先進国中、記帳を任意としている国は1ヵ国もないことを考えれば、これを改正すべきは明らかなんです。

加藤なるほど当然ですね。

飯塚こんなことを続けていては、日本は世界のはぐれ者になります。

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