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新型間接税は論議を尽くして-8

マイスター制度と日本のTQC

飯塚いま会頭は政府の指導・誘導と言われましたが、地域間格差の是正となると最終的には立法問題に帰着しませんか。

その際、西ドイツの賃金協約法はひとつのヒントになると思います。

これは、各中小企業が労働組合との間に協約を結ぶと、それが労働基準監督署を通じて中央に集められ、その中でいい協約が労働大臣の「一般的拘束性の宣言」によって、全国の企業に適用されるのです。

もちろん、これだけ取り出して導入せよというのではなく、全国をバランスよく成長させるには、それくらいの徹底的な立法を以てする。それほどの覚悟が必要だと申しているのです。

石川会長は何事にも抜本的ですね(笑)。

そういう風にゆけば、商工会議所会頭は幸福です。

飯塚会頭は経済界のトップで、まさにその衝におられるわけですから、そこまでお考え頂きたいと、1例を申し上げたわけです。

それに関連して、またドイツを例にとって恐縮ですが、申し上げたい。

西ドイツの人口は日本の半分。しかも外貨保有高は日本より多い。これはなぜでしょうか。

昨年末、西ドイツに参りました折、全国税理士会の会長と対談した時、この疑問を持ち出し、もしかしたらドイツ特有のマイスター制度と関係があるかもしれないということになって、関係の法律の条文を頼んだのです。

石川ほう。

飯塚すると条文を収録した本を3冊寄越しました。読んでみると、「手作業に関する法律」というのがあって、それによってマイスター制度が確立されているのです。そして、この制度によって末端労働者の労働の品質がコントロールされている。

本誌会頭はさきほど自助努力といわれましたが、日本の場合は、各企業の自助努力で品質管理――QC――極めて優秀とされる――が徹底しているのですね。

石川おっしゃる通りです。日本が年間1,000億ドルの黒字になるほどいい製品が出来るようになったのは、総合的な品質管理――TQC(トータル・クォリティー・コントロール)の力が大きいと思います。

いま、アメリカの車を持って来ても、買う人はいないでしょう。

飯塚今や、日本の車の方が、性能が良いですから。

会頭がおっしゃった品質管理は、アメリカが導入し、日本がアメリカから学んでそれをマスターしたものですね。

石川そうです。

この総合的な品質管理は、これからも推進してゆく必要があります。

外国からもその勉強に来ていますが、日本独特の雇用慣行と結びついていますから、仲々真似はできないでしょう。

飯塚西ドイツのマイスター制度が中世以来のドイツの伝続から出ているように、ですね。

石川雇用形態の違いだけでなく、経営陣の制度も違いますからね。

たとえばアメリカだと短期間で業績を上げれば、経営者にボーナスが出る。反対に業績が下がれば社長は取締役会でクビになる。そのため、会社の将来を考えての投資に積極的でなくなる。これが問題です。

西ドイツの場合は、有名な労使の「共同決定法」が、先端産業の開発にはマイナスに働いています。アメリカや日本に追いつけないでしょう。

飯塚確かにそうです。向うの指導層の人たちが嘆いています。「日本のハイテクノロジーに遅れをとった」と。

私は、先年ドイツヘ行ったとき、TKCが使っている富士通のコンピューターの優秀性を宣伝し、それが機縁で富士通の超大型コンピューターが導入されました。

石川ほう。

飯塚私は尊敬するドイツに、日本の優秀な製品を使用してもらうことに満足しているのです。

石川それは良いことですね。きょうは迫力のあるお話を伺いました。ご加餐を祈ります。

飯塚こちらこそ、わが国経済界のリーダーのお一人に“直訴”できて幸せでした。ご傾聴に感謝します。

本誌貴重なお時間を割いて頂き、有難うございました。

(編集主幹・木場康治)
(VANGUARD 1988年4月号より転載)

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