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ドイツからみた日本の税制と商法-2

正規の簿記の諸原則と会計指令法

飯塚ドイツにおける記帳義務をめぐる法制の沿革・変遷について、簡にして要を得た解説に感謝します。

ダン博士が言われたようにドイツ商法に記帳義務が規定されたのは1871年ですが、「正規の簿記の諸原則」という言葉が使われたのは1898年(明治31年)の改正商法からでしたね。ただし、それは中身がなかった。セービガー博士が言われたように、1919年12月13日に成立したライヒ国税通則法で、初めて内容が具体的になったのですね。

ダン飯塚博士の正確な記憶には敬服します。まさに仰言る通りです。ただ、法律ではそうですが、「正規の簿記の諸原則」に則った記帳は、それまでも商人の慣習として行われていました。

飯塚そうなんですね。そこがドイツの凄いところです。日本には法的にも慣習としても、それがなかった。そこで私は政府の要路――例えば法務省当局はむろん内閣官房長官に対しても、ドイツでは記帳義務が長い間、一般化しており定着している。日本がその努力をしていないのは間違いだ、とアドバイスしてきました。

ダン飯塚博士は卓越した専門家で、私どもの西ドイツ税務研究所でも『正規の簿記の諸原則―その日独法制の比較論』のドイツ語版を刊行させて頂き、貴重な教えを受けております。その一事でか分かるように、博士はこの分野における大家であります。

この「正規の簿記の諸原則」はドイツ商法にも会計指令法という形で採り入られておりましたが、1986年、EC全体の動向に歩調を合わせてさらに改正され、現在にいたっております。

飯塚そうですね。

セービガーところでドイツでは日本と同様に税務計算をコンピュータで行うことが増えております。そうなるとAO(国税通則法)に相応するだけでは駄目で、AOに関するコンピュータ処理の原則に合ったやり方でコンピュータ簿記をしなければなりません。

これは正規の簿記の諸原則と全く同じことで、コンピュータ簿記の諸原則というのは、要するに納税者の保護に役立ち、税務署に対して正しい納税が出来るようにすることです。

飯塚ダン博士は会計指令法と言われました。これは1つの法律のように聞こえるが、そういう名で包括しているだけであって、実際は関連した39の法律の改正のことなのです。だからその条文を合わせると650頁にものぼります。

そのことと、今セービガー博士が言われたコンピュータ会計の原則の問題は、若千次元が違いますから、これは順序を追って話し合いましょう。

セービガー分かりました。それでは会計指令法からいきましょう。

飯塚ダン博士の言われるように、ECでは会計指令法に沿って商法改正が行われている。しかもその改正は、こと会計に関しては条文が100か条以上ある。これは日本人にとって驚きです。日本の場合は記帳に関しては僅か5か条しかありません。圧倒的にドイツに先を越されています。

ダン100か条と言われたが、それは私たちが当然果たさなければならない義務だけでなく、会計監査の仕方、年次報告の書き方、状況報告をはじめ、各種書類をマイクロフィルムに収めて何年間保存するといったことにまで及んでいるので、そんなに膨大になっているわけです。

今回改正された中で1番大きな部分はコンピュータ会計に関する条文です。

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