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ドイツからみた日本の税制と商法-5

ドイツ付加価値税の経験

飯塚日本は消費税を実施して5か月になります。これは大変な反対があり、7月の参議院選挙で与党が惨敗したものですから、政府・与党は見直しを迫られています。次の衆議院選挙でも、廃止か見直しかが最大の争点になるでしょう。

その見直しの1つとして、税額を値段に上乗せして支払う現在の外税方式をやめ、値段の中に入れる内税にしようという案が出ています。内税にすると消費者に一々税を意識させないというメリットがあります。

税の先輩である西独の専門家として、これをどうご覧になりますか。

ダンドイツの場合、日本の消費税に相当するのは付加価値税で、平均14パーセントかけられています。商人あるいは会社間では税額を上乗せし、最終取引高として処理していますが、一般消費者と接する店は内税方式をとっています。これは税制心理上、非常に有効です。

飯塚どこでも同じですね(笑)。

セービガー日本の消費税はまだ3パーセントですが、ドイツでは14パーセントですから、これが外税だと購買意欲をそぎますからね。

本誌こちらは3パーセントでも大騒ぎです(笑)。

ダンドイツが付加価値税を導入したのは1968年(昭和43年)で、その時は一般の消費については10パーセント、食料品はその半分でした。今はそれぞれ14パーセント、7パーセントとなっています。日本の3パーセントというのは、非常に低いところから始めたわけですね。

飯塚ドイツでは付加価値税の導入は1968年ですが、第1次大戦の最中にカイザー・ウィルヘルム二世が取引高税を導入していますね。それが付加価値税の前身とすれば70年以上の歴史を持つことになります。日本はその点、全くの初めてですから……。

ダン仰言る通りです。1916年(大正5年)の取引高税の時は、生産者段階で4パーセント、流通段階で1パーセント、流通の末端から消費者への段階でまた4パーセントという具合だったので、流通機構や生産機構が複雑なほどその分、高くなりました。逆に消費者が卸、小売抜きで買うと、同じ品物がうんと安くなるなど競争に歪みが出ました。

その反省から、1968年の付加価値税導入の時は、生産から消費までの長い過程の内で1回しか税をとらないという方式で始めました。

飯塚付加価値税導入の2年前、1966年12月に西ドイツ憲法裁判所が、従来の取引高税は無効だとの判決を出しましたね。その理由のひとつはサービスに課税していないのは、国民は法のまえに平等であるという憲法第3条違反だというものであったと聞いておりますが……。

ダン新しい付加価値税が1968年の1月1日から施行されることになりまして、憲法裁判所は従来の取引高税は無効だという判決を出しました。しかし、無効になった最大の理由は、さっき申しましたように生産、流通の過程で段階が多いほど同じものでも高くなるという点でした。

飯塚なるほど。

セービガー飯塚博士は消費税に賛成の立場と聞いておりますが……。

飯塚私は基本的には賛成です。国会の予算委員会の公聴会でもその旨証言しました。ただし、政府原案にあった幾つかの不合理な点を改善すること、特に立法に当たる政治家が政治資金において潔白であることを要請しました。

本誌飯塚博士を「荒野に叫ぶ予言者」と評した人がいるのですが、あの証言はまさに予言者的でした。リクルート・スキャンダルで多数の政治家がつまずき、消費税を強行した竹下内閣が予言通り倒れたのですから。

セービガーそうでしたか。飯塚博士に改めて敬意を表します。

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