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「文化摩擦」回避の道-5

心は金のようには流れない

佐藤仰言るとおりです。

モノやカネは自由に流れるようになりました。しかし心は流れない。その乖離からいろんな問題が起こっているとも言えますね。

私は日本にいる時は月に1度は秋田の田舎へ帰ります。東京生まれの家内は「いっそ東北へお帰りになったら」と。同じ日本人の、しかも夫婦でもこんな乖離がある(笑)。心というものは1代、2代、3代……時間がかかりますね。

飯塚禅家に師資相承という言葉があります。老師と弟子、1対1の薫陶の中から悟達が伝えられてゆくことを表わす言葉です。これはいわば純粋培養でしてね。一般の文化は親子を頂点とする血縁、地縁によって何代もかかって熟成される。

佐藤島崎藤村は「ふるさと」を論じて、第1に言葉――勿論、土地の言葉です――、次は血、第3に心をあげています。これがつながっているのがふるさとだと。日本人が外に対する時、この「ふるさと」が無意識のうちに「日本」と重なっている。それが日本人の心理なんですね。

飯塚そう。

佐藤日本の企業の方はよく「外国が日本のようになってほしい。日本はいいところがいっぱいあるんだから」と言われる。それに越したことはないが、そう甘くはない。

最近のアメリカの統計では、学生に「どこへ行って勉強したいか」と尋ねたら、30%はイギリスで、フランスは16%、ドイツ5%、日本はたったの2.5%です。

飯塚なるほど。

佐藤やはり西欧文化は2,000年、3,000年の歴史があって、それが世界の先進国文化をつくっている。日本もそれを学んである程度成功したわけですが、魅力となると……。

飯塚アメリカではソ連研究者が激減し、日本研究者が急増しているそうですが。

佐藤増えているでしょう。この10年で、2、3倍になっているかもしれません。実利がありますからね。しかし、もともと少なかったのだから何倍に増えたといってもね。

向こうではスリー・パーツ・ハーモニーという言葉をよく聞きます。アメリカ、アジア、ヨーロッパがどういうふうに協調してゆくかということです。しかし、日本について言う時は、マネー・イズ・ノット・エブリシング――お金がすべてじゃない――というのがつく。

飯塚戦前は日本の側が「欧米は物質主義で日本は精神」と言ったものですがね。

佐藤今ではジャパン・イコール・マネーですものね。日本のメディアの発達にはすごいものがあります。これを駆使してもっと日本を売り込み日本研究者を増やすことを考える時が来ていると思いますよ。

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