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「文化摩擦」回避の道-8

「環太平洋」時代に処する知恵

飯塚ドイツの思想家にシュペングラーという人がいましたね。この人には1,000頁を超す大作の。“Der Untergang des Abend landes”「西欧社会の没落」という本があります。

佐藤ええ。

飯塚この人が「次の世紀には東洋が中心になるだろう。太平洋の周りで」と書いています。これは見事な予言です。環太平洋構想が現実のものになりましたからね。もっともこの環太平洋にはアメリカもオーストラリアもニュージーランドも入りますが。

佐藤そうですね。「環太平洋」は歴史の流れです。しかし、あるプロセスには必ず反発する流れが生ずる。

飯塚1992年をめざし統合に向かっているECは、一面ではその「環太平洋」に危機感を抱いた西欧諸国の団結だと思うんです。今度、東欧社会主義諸国が西欧志向の大変化をはじめたのでEC諸国統合は加速されるでしょうね。ドイツ再統一問題が同時に浮上してきたので、複雑になりましたが。

西欧の国々、また西欧の人は1,000年を超す相互作用の経験で、近くは2度にわたって世界大戦を引き起こし自ら被害者になった経験から、先生の仰言る相互主義を意識していますね。

佐藤そうなんです。動があれば必ず反動があることが、骨身に徹しています。従ってレシプロシティ――相互性の大切さも。

飯塚戦争は出来ないということを、いやというほど悟った。嫌でもレシプロカル(相互的)な関係を定着させなければならないと。

佐藤そうです。だから摩擦といっても戦力を使うということにはならないでしょう。

飯塚「経済戦争」に止まっているかぎりはね。でも、何事でもそうだが、手放しの楽観はしない方がいい。

佐藤歴史を見ると、人間は賢くなっているのかどうか、怪しいものですね。

飯塚ある思想家は、「人類は後ろ向きに未来に入って行く」という意味のことを書いています。過去の教訓はあるが、全く同じ状況は2度とありませんからね。

佐藤幸い、原爆はあれから使われていませんが、小さい戦争は繰り返し起こっています。

飯塚アメリカはベトナム戦争を、ソ連はアフガニスタンを経験した。局地的ではあるが、決して小さな戦争じゃない。

佐藤アメリカは内政は合理的で、それだから日本の製品は進出できたわけですが、こと外交になると非合理的な感がある。逆に日本は内部には非合理的なものが沢山ありますが、対外政策はまあ合理的といえるのではありませんか。

本誌ゴルバチョフ以後のソ連は外交は合理的になり、彼は外国では「ゴルビー、ゴルビー」ともてはやされていますが、国内の非合理はなかなか改善できませんね。

飯塚やはり人間はあまり賢くないというのが正解かもしれない。ただ、生物学者にいわせると地球には300万種の生物が棲んでいるそうだが、その中では人間はやはり優れている生物の筆頭でしょう。賢いかどうかも比較論でね。

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