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漢方-2
これからの医療文化

医者の80%が漢方薬を使う

本誌ではまず、丁先生、日本における漢方状況からお話し頂けませんか。

その前に、古代中国では医者が高貴な人を治療するときは契約制でしてね、失敗すると殺されました。手の病気なら手を切られた。

飯塚あいや。すごいね。医者は真剣勝負だ(笑)。古代インドでは高貴な人の前で学者が討論して、負けた方が殺されたという話がありますが。

その代わり、患者は医者の指示することを忠実に守らなければならない。そうでないと契約違反ということになりました。今は医者と患者の関係は比較的ルーズで、そこから治療上、具合が悪いことが出てきます。野蛮なようだが、昔のやり方にも学ぶべき所がありますよ。

飯塚先生も医療行為は一種の契約というお考えですか。

そうです。

飯塚それはすごい考えだ。

ところで、今の人は漢方薬は迷信だと思う人と、何でも治してくれると幻想を抱く人の2通りあります。医者はどうかというと、14、5年前の日本の医者は約10万人、その中で漢方をやる人は1,000人くらいでした。ところが、医者が倍近くまで増えた現在、その80%が漢方薬を使うようになっています。いま漢方薬を使わないのは年を召した方で、若い医者はほとんど全部使います。そのうち100%になるでしょう。

飯塚驚くべき変化ですね。

しかし、ほとんどがエキス剤となっておりますので、患者さんは分からないでしょう。というのは、アルミ包装で外観上では見分けがつきにくい姿になっていますから。

本誌下剤とか下痢止めは大体漢方薬だそうですね。

スモン病を引き起こしたキノホルム。あれは簡単な下痢止めの薬なんですが、長く飲んでいるとスモン病になるのです。いまは医者が用心して下痢に強い薬は出しません。まず漢方薬でということになってきました。

飯塚ご本には、違った薬を同時に服用してはいけないとありますね。

同時に飲んでいいものもありますが、いけないのもあります。

飯塚それは我々素人にはとても分かりません。

医学部でもそこまで詳しくは教えません。医者それぞれの経験・年季ですね。また患者の反応を見ながら勉強してゆくのです。

医学知識は駆け出しの医者が1番もっています。習いたてですからね。だが、治療となると10年、20年のベテランの医師が断然うまい。医学は経験学です。

漢方の分かる医者が一人前

飯塚日本医師会の会長を務めた武見太郎先生も、当対談で確か漢方を勉強したと言っておられました。「医者は漢方を勉強しなければ一人前でない」とも言っておられた。さすがですね。先生は西洋医学と漢方を若い時から勉強されたようですが……。

今はほぼ漢方専門、というところです。日本では漢方医というのはいないのです。医者は必ず西洋医学を修めなければならない。その後で漢方を研究するのは自由という制度になっています。

こういう制度は日本だけです。中国、台湾、韓国は別々なんです。西洋医学をやる人と漢方をやる人は分かれている。これはよくないですれ。

飯塚互いに相手の悪口を言うことになるでしょうね。

日本では西洋医学において一流の方々が「漢方の伝統は守らなければいけない」と頑張ってくれました。それと昔から漢方に関しては経済行為という色彩が薄くて……。

飯塚医は仁術という素晴らしい伝統がありましたね。

そうです。その2つから本当に効く薬だけが漢方薬として残ったのは幸いなことでしだ。また漢方にも徳川時代はいろんな流派がありましたが、明治以後は垣根がとっぱらわれました。

そういう次第で、効く薬がきちんと残って集大成されたあと、最近になって漢方が見直されたので、具合よく現代医学としっくり馴染むようになったのです。

飯塚そういう点、日本人が優れたものを融合する才能は大したものだ。

そうですね。最初は輸入だったのですが、鎖国時代を経て日本化しました。使う薬のレパートリーは中国と似ているのですが、実際の使い方は随分違っています。

中国では中医というのですが、その中医と日本の漢方は、同じ海にいてもイルカとマグロくらいの違いがあります。

飯塚ほう、そうですか。日本の漢方の特徴というとどうなりますか。

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