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漢方-7
これからの医療文化

予防の方が安上がり

飯塚いまのお話は、我々の業界と関係するところが多少あります。

いま注目されているEC――欧州共同体は1992年の単一市場をめざして、年間約3,000の指令を出していますが、その中の会計に関する指令、つまり第4号指令で関与企業の未来予測を義務づけています。

1986年まではドイツの商法では未来予測はしてはいけないことになっていたのです。アメリカも然り。それがここへ来てころっと変わった。未来予測は義務化され、アメリカの会計士協会は予測の手法まで発表しました。その点、日本の会計は遅れています。

本誌世界の会計業界は漢方の精神を取り入れた形ですね(笑)。

飯塚そうなんだ。先生のお話を伺っていて、僕もそう思った。

本誌いま言われた会計の未来予測はどういう形で出そうというのですか。

飯塚営業報告書です。

それはいきなりは出来ないでしょう。3年とか5年前からのデータに接していなければ予測はできない。医療の場合もそうです。

飯塚そうです。医学も予防医学的にならざるを得ないし、経営診断もそうならざるを得ない。

つきつめるとその方が安くつくのです。それが広く認識されたら、健康保険制度は改変されてゆくでしょう。どうせ金を使うなら予防に使った方が安上がりです。

飯塚健康保険で使っている金は膨大な額ですからね。

予防の方に使うと個人の生活の質が上がり、それが生産の場でも有効に働きます。一部の企業ではすでにそういう試みがあるのです。

例えばある大手製鉄会社の健康保険組合はトータル50億円を予防的プロジェクトに使っていたのですが、その結果、支払う保険金が最終的に下がっているそうです。

週休2日のうち1日は無料のスポーツクラブで体を鍛えるとか、専門の指導者を派遣するとか、そういう企画をいくつかやっている。すると結局、病欠がすくなくなって、企業にとっては二重のメリットがある。これは一例ですが、だんだんその方向にゆくと思いますよ。

健康保険制度は改革の要あり

本誌しかし、まだまだ、予防がよいと分かっていても痛まないと医者に通わないですね。

だから、将来はまず契約書にサインしてもらうようにしたらと思うのです。そうでないと、患者が医者の言うことを聞き流します。

予防医学の核心は患者に対する医療教育です。

ところが、それは保険に取り入れられていないから、患者に時間をかけて説明しても、1回の診察料金は3,000円までです。医者の指示を聞かない患者に限って自分の孫がどうのこうのと他人の相談までする。アメリカだとこれは加算されますがね。そういうことが重なって結局「2分間診療」ということになる。

だから、いまの保険制度が医療を荒廃させているという面がある。これは早急に是正しなければなりません。

飯塚それは国会議員の仕事なのに、役人まかせにしているからダメなんだ。

もう1つの問題は税制です。税制の権威、飯塚博士を前に恐れ多いのですが、医師優遇税制は世間の風当たりが強いんですが、医師の生活を安定させてゆとりのある状態で診療に当たらせる方が大局的に見て患者側の利益ではないですか。その方が自然な患者の要求だと思うのですがね。

飯塚なるほど。

私は政治には金がかかる。だから政治家が金を集めるのは禁止するな。政治資金を国家が出すことを考えてもよい。その代わり使途を明確にせよ――と訴えているのですが、医師税制についても同じことが言えるというわけですね。

本誌お二人の論法は、大局的観点に立って全体像の整合性を第一義にしておられる。したがって説得力がありますね。

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