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湾岸戦争-5
企業経営への教訓

「湾岸対応の失敗」は経営者にも教訓

飯塚しかし、この失敗は経営者にとってもよそ事ではありませんね。

佐々学ぶべきことがいっぱいあると思います。

国益の問題ですからまず閣議か総合安保閣僚会議を開き、最初の段階で得られる限りの情報を共有したうえで情勢判断するべきでした。企業なら重役会議ですね。

そこで甲論乙駁して情勢を判断し、決定して任務を付与する。厚生省は医師を頼む、運輸省は全日空の労働組合を口説いてくれと。このときお金のことをはっきり言わなければ駄目です。

飯塚そう。

佐々湾岸危機が勃発したのは去年8月ですね。8月といえば既に予算を半分以上使い後半の執行計画も出来ている時期です。そこへ新たに負担のかかる任務を与えるには、予備費を幾ら出す、特別の予算を出すとはっきり言わなければ組織は動きません。それをやらなかった。

飯塚先だつもので安心させなければね。

佐々「悪い報告をしろ、楽観的な報告は駄目だよ」でなければならないのに、「戦争はないと思います」とか「アメリカは必ずしも要員の参加を望んでいません」など、耳当りのいいことばかり吹き込んで首相の判断を誤らせました。

飯塚そのようですね。そこへゆくとブッシュ大統領は羨ましい。ベーカー国務長官は刎頸(ふんけい)の友。そのうえにスコークロフト特別補佐官、チェイニー国防長官などいつも危機管理を共にしている幕僚に囲まれ、的確な情勢判断がさっと出来る。そのうえで、1人で最後の断を下したんだ。

佐々緊急事態には常に具体案が要りますね。それには時間を切らなければいけない。普段なら調整する時間がありますが、緊急事態ではそんな悠長なことは許されない。右にするか左にするかの決断を、待ったなしで迫られているわけですから。

そして決断し、指揮命令すれば、あとは断固として進まなければいけません。やる、やめた、は絶対やってはいけない。これは組織のルールです。

飯塚海部さんはそれを4回おやりになった。

佐々よく見ていらっしゃる(笑)。

それから、命令したら違反者には厳罰で臨まなければいけません。命令が誤っていたら自分で責任をとる。ところが、今回は誰も責任をとりませんでしたね。国連平和協力法であんな失敗をして国際的に威信を失墜したのにですよ。

飯塚それをやらないから、最後までずるずると来てしまった。締まらないとはこのことだ。

佐々国の危機管理だから政府の問題だと思う人がほとんどですが、これはリーダー一般の問題で、企業にもそのままあてはまりますね。

普段なら誰が社長をやっても組織は動きますが、緊急事態の場合は、さっきから申しているルールでやらないと負け戦になること必至です。

飯塚今度のことで明らかに日本は負け戦だった。アメリカの雑誌では戦場で負けたサダム・フセイン大統領とともに、海部首相が「ルーザー」すなわち敗者の側に写真入りで挙げられていました。刑法に不作為の罪があるが、海部さんは――ということは日本は、不作為によって負けた側に入れられた。

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