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湾岸戦争-7
企業経営への教訓

対日不満が鬱積しているアメリカ

本誌佐々先生は、国内で耳に痛いことを発言されるだけでなく、渡米して向うの要人と精力的に接触されましたね。11月に行かれた時は60人くらいにお会いになったと聞いておりますが……。

佐々あの時はホワイトハウス、国防省、国務省などでブッシュ政権を支えている人たちだけでなく、レーガン政権時代に要職にあった人たち、元在日米軍司令官、あるいはパッカードさんのような親日派の大学教授、オピニオンリーダーに会いました。バンダービルト大学でのセミナーに参加して発言もしました。

親日派・知日派は「日本が戦争に参加できないことは承知している。非軍事の輸送艦や輸送機、医療チームを出してくれ。それも無理なら政府の役人を現地に出して日本の旗を立ててくれ。世界中から出しているんだ。日本はアメリカの同盟国で友人だろう」と口々に言っていましたね。「何もしなくていいから出してくれ。傍にいてくれるだけでいいんだ。戦争は早期に終る。そのとき日本の地位が低下しているとアメリカは困るんだ」と。

飯塚なるほど。

佐々反対に「出さなくてもいい」と言う人もいました。キッシンジャー元国務長官がその代表ですが、私の知っているリチャード・パール前国防次官補もその派でしてね。この人は親日ではなく、むしろ日本嫌いです。「自衛隊は来てほしくない。世界の安全保障問題に日本が軍事面で発言権を持つのを米国は望まない。東南アジア各国もそうだろう。その代り金を思い切って出せ」と。

本誌3月に行かれたときは、どうなっていましたか。

佐々親日派・知日派の人たちはげんなりしていましたね。日本の出方に対して無関心になっていた。日本が派遣するのは結構ですよ。ご自分の利益のためにお出しになるのですからね、と。

本誌火事場の火はほとんど消えていましたからね(笑)。

佐々日本を大事にする優先順位はぐんと落ちていました。それよりゴルバチョフのソ連がどうなるか。中東だってまだブスブス火種が残っている。ユーゴスラビアは分裂の危機――そういったところが関心の的で……。

「日本は湾岸戦争で貢献してくれた」と、ホワイトハウスは日本をかばっています。海部首相と会ったときブッシュ大統領はそれを記者団に強調しました。でもそれは外交辞令でしてね。

飯塚本心は別のところにある。

佐々自分たちの対日政策を批判されては困るから日本を悪くいわないが、腹の底には「あれだけ頼んだのに湾岸に人を出してくれなかった」という気持ちがありありと見てとれます。怒ってくれる方がまだいいのだが、冷えてしまっている。

米議会では対日経済貿易制裁案など反日的な決議案が目白押しですよ。例えば自動車がだめならタイヤに課税せよとか……。

飯塚そこへ幕張メッセでの米国産米の撤去事件が起こった……。

佐々私の滞米中でした。展示場に詰めていた米国人関係者に、日本側が「撤去しないなら手錠をかける」と言ったとか誤って伝えられた面もあります。それを丁度来ていた中山外相にブッシュ大統領が持ち出した。あれは日本への不満が鬱積していたときに起こったからです。

飯塚そう説明して頂くとよく分かります。あんな事務的な問題を、大統領や国務長官が正面から持ち出すのは些か大人気ないのではないかと思っていました。

佐々いま申したほかにも、弁護士の国際免許、知的所有権の問題、それから難民受け入れの問題など、貿易不均衡の陰にかくれている問題がいろいろありますからね。その上に今年の12月は真珠湾奇襲――日米開戦の50周年に当たります。

飯塚対応するこちらも忙しい(笑)。でも、後手後手に回るから忙しさが加速されているという面がある。こういうボタンを押すと向うはこう反応する、という予測をした上でボタンを押すべきですね。幕張メッセの事件で日本側に反省すべき点があるとすれば、それではないか。

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