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巡回監査

飯塚毅会計事務所と巡回監査

巡回監査-2

巡回監査の法的背景

職業会計人にとって、巡回監査が必要である法律的な背景について、飯塚毅博士は次のように述べている。

「巡回監査が絶対的に必要とされる税理士は、法人税法や所得税法の領域で、継続的に、記帳、決算、 又は申告業務に携わっておられる税理士先生だけである。この先生方は、税理士法第45条の、いわゆる『真正の事実』という概念の呪縛の下で生活している職業会計人である。なぜに呪縛というのか。それは同条にいう『真正の事実』から故意に(未必の故意を含む)越脱した者は、業務の禁止を含む懲戒処分という行政処分を、受けてしまう可能性があるからである。ここにいう『業務の禁止』とは、税理士資格の剥奪のことであり、それは刑罰ではないから、本人の自白だけで、これを証拠として、剥奪の処分ができるのである(憲法第38条第3項)。それよりももっと重大なことは、日本の税理士法には時効制度がないことである。従って、日本の税理士は、昔『真正の事実』に反する税理士業務をやったことがある、という過去の事実だけで資格剥奪にもってゆかれてしまう可能性のもとで暮らしているのである。この点も気付いていない税理士先生は意外に多い。それらは、税理士の行動を、基盤条件として拘束しているものであるから、敢えて呪縛といったのである」(『TKC会報』平成3年5月号)

さらに、記帳義務者の範囲の法定や、脱税者への罰則が軽微であることなど、法制度の欠陥が存在することも、 巡回監査の必然性につながると説く。

「我が日本にあっては、第1に記帳義務者の範囲を定めた法条がなく、第2に会計記録の原則を定めた裁判例は五指に満たず、 第3に完全性宣言書の法的な添付義務はなく、単に任意の添付事項として税理士法第33条の2の第1項に、大蔵省令で定める事項の記載書面添付を認める旨の表示があるに止まり、第4に日々の現金残高確認の法定義務などは勿論なく、第5に現金出納帳に万一不完全記帳があったときは、関係帳簿全体の証拠性を否認する法条などはなく、単に更正処分の事由をなすに止まっており、第6に脱税の未遂犯については、所得税法、法人税法及び国税通則法にはその条文が全くなく、単に消費税法の一部についてのみ、その片鱗をのぞかせているに過ぎず、第7に国を偽り、社会を偽った悪質な脱税犯についても、『5年以下の懲役若しくは5百万円以下の罰金』『又はこれを併科する』との規定(法人税法第159条)をもっているだけである。これが日本なのである。

それはかつて論じたように、

  1. 納税義務者が断じて自分は脱税しないとの鮮明な決意を持ち、
  2. 法人税法及び所得税法について専門的な学識を持ち、
  3. かつ、それを綿密に実践する実践意思をもって行動している場合にのみ、

巡回監査は必要ないのである。租税正義実現の理想で団結するTKC会計人は、誓って毎月の巡回監査を断行し国家と社会とから、信頼され尊敬される会計人に徹していかねばならない。それ以外に、日本では会計人としての生き甲斐と栄光はないのである」 (『TKC会報』平成3年5月号)

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