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歴史にとどめを残せ渡辺財政-4

税制の改革に対する提言

本誌飯塚先生、時間が無くなりましたので、盟友、渡辺美智雄大蔵大臣のために、税制の根本的な改革に対する提言を2、3述べて下さい。

飯塚国民に納得のいくように、厳然として宣告してもらいたいと思うことが、6つばかりありますので、申し述べたい。

大臣をはじめ大蔵当局でも、税金を取りやすいところから取るというやり方は採りたくない方針だと思っていますので、是非、税制のゆがみを是正する意味で、「税の不公平を叫ぶ者がいない状態」にまで課税正義の原則を貫いて欲しいものです。そうしないと国民が納得しない。そのあとに増税を考えるべきだと思う。

渡辺飯塚さん、そのことが基本的に正しい考え方であり、態度だよ。

飯塚大臣にそのように、おっしゃっていただけるとうれしいですね。国民が安堵しますよ。

まず(1)できる限り、国民に「税の不公平を叫ぶ者がいない状態」にまで、課税正義の原則を尊重して、税法のゆがみを是正してかかるということを、この際国民にわかり易く、宣言して頂きたい。先進文明国で課税正義の原則を重視しないのは、実査結果によれば日本だけだからであります。

特に、大臣は国民に対して説得性のあるお話しの出来る方です。国民はテレビ等々で大臣の発言を聞いて親近感を持っているわけですから、この事を特に強調していただきたい。国民は拭い切れないような不安感から解放されますよ。

(2)給与所得者を除く、全納税者を実質上の青色申告者とするよう、所得税法及び法人税法の一部手直しを行なう点を明確に宣言し、納税者の取り扱いを、先進文明国同様に、公平に行なうことを国民に繰り返し納得させて頂きたい。

(3)所得税第120条第1項所定の、所得基準の申告納税体制を、米国の内国裁入法第6012条に規定するような、そして先進文明国の全てがそうであるような、総収入基準の申告体制に切り替えるとの、一部改正を願いたい。所得基準の申告体制は、先進文明国中では、実に日本だけしか採用していない体制である点に、ご留意を賜わりたい。

大臣、ご承知のように、所得税法第120条第1項というのは世界にない日本だけのものですよ。世界の文明国は今や、総収入基準の申告体制に切り替っている。国際水準に引き上げていただきたい。アメリカの場合は年間1,000ドル(22万円位)以上の収入があれば、全部申告しろということになってます。

(4)会計帳簿及び財務諸表の記載義務について、先進文明国と正確に歩調を合わせ、単に1)記載義務違反について刑罰を課す、との法条のみではなく、2)不実記載についても刑罰を課す、との法案を設け、国民の納税姿勢の背筋を延ばす、との態度を鮮明にして頂きたい。この2点の法の整備ができていないのは、実に日本1ヶ国だけだからであります。

例えば、記載義務違反、不実記載違反ですが、アメリカでは、5年以下の懲役又は罰金です。イギリスは2年以下、ドイツは3年以下、厳しいです。甘いのは日本だけです。脱税の道に繋がるのですね。

(5)会計帳簿の記帳について、わが国の法令は、記帳の手続き方法については規定していますが(法人税法施行規則別表20など)、記帳の品質については商法第32条が整然明瞭性を謳うだけであります。この点を、西独、米国、英国と同様に、鮮明化して頂きたい。因みに西独では、「完全網羅的に、真実を、適時に、整然明瞭に」記帳すべきことを商法と税法とで定めています。この点も、日本法令だけの重大なゆがみであります。

これは、厳密に調査しましたので間違いはありません。

(6)取引の原始記録を最初に見るのは経営者側であって、職業会計人側ではありません。従って、経営者側が先ずその真実性について国家社会に対し法的責任を担うべきであって、日本のように、事あれば職業会計人だけが責任を負わされる法則は、異常であります。脱税や無申告の時効期間延長のみではなく、監査人に不実の申立をした者にも、刑事罰を課すのが先進文明国の一致した体制となってきています。

例えば、ドイツの株式法399条とかイギリス会社法の19条というのは、会社側が、監査人に不実の中立をした時には刑罰を受けることとなってます。

渡辺いやあ、これは有難う。まだ、予算編成までに時間もあることだから、事務当局に充分検討させよう。

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