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“税制改革大綱”の誤謬を撃つ-2

売上税導入は更なる不公平を生む

本誌今回の税制改革案を会長はどう見ておられますか。

飯塚文章の格調の高さと、問題点の整序の仕方、および論争を呼ぶ小分岐点に対する選択肢の与え方などには感心しましたが、しかしながら、同時に、税法学および会計学の専門家の立場から見ると、真に驚愕に耐えない点が多々ある。それは、問題領域の発見能力の点で、粗雑であり、着眼が幼稚であり、かつまた国家論的にも問題の本質がちっともわかっていないという驚きです。

加藤会長に合格点をつけてもらうなんてそれこそ針の穴に象を通すことよりも難しいことですがね(笑)。

飯塚いやいや、そんなことはありません。私は大地を這いずり回っている一実務家に過ぎません。ただ、私が生涯をかけて体系的に習得してきた税法理論を何とか国家の為に役立てたいと願うだけです。

加藤その情熱が素晴らしい。

会長が昨年の「バンガード」(3月号)にお書きになった論文を興味深く読ませて頂きました。会長の国の将来を思う切実なる心情も胸に迫りました。

その論文でも、憲法で定めた平等原則を貫徹せよと主張しておられますが、同感です。面白いことに、公平という考え方自体が、日本とアメリカで大きく違うのです。アメリカの場合は、所得の如何にかかわらず、みんなが平等に税を負担することと考えるから、フラット税制になる。従って、所得税を15から2段階にまで一気に公平にしてしまう。つまり“哲学”がまずしっかりあって、そこから制度が生まれてくる。これに対し、日本には“哲学”がなく、アメリカが少なくしたから日本もという発想だから、8段階にしてみたり、6段階にしてみたり、しかも一挙にやると大変だから2年後に、などと極めて場当たり的。何を目指しているのかをはっきりさせることが先決なんですよね。

飯塚先生は間接税導入に基本的には賛成とのご意見だが、その理由は?

加藤間接税というのは、平等原則といいますか、公平という点では極めて公平な制度なわけです。所得に税金をかけるという“哲学”は世界的に徐々に弱くなりつつあり、どちらかというと支出に税金をかけるという考え方が強まっています。間接税というのは万人に平等に公平にかかるわけで、間接税自体は悪い制度じゃない。しかし、公平ということをはっきりさせたうえで導入しないと逆に不公平を生むことにもなりかねない。今の所得税が九六四(クロヨン)になって、非常に不公平になっているから、これをより公平にするためなら間接税を導入することは結構。しかし公平に課税するには非課税がやたらにあってはならない。今回の売上税のように免税をたくさん設け、しかも2,000万円以下ならいざしらず、1億円以下などの線引きをしては、新たな不公平と作業の煩雑さを生むだけです。

本誌しかも、売上税という名を付けて、間接税ではないと誤魔化そうとしている。

加藤白い馬は馬じゃないという詭弁を弄している。むしろ間接税という言葉を正直に使い、直接税だけでやっていると九六四(クロヨン)などという不公平がでてくるから、これを是正するために間接税を導入したい。その代り国民の負担を最大限に小さくしますと正直に訴えるべきですよね。2,000万円以下の企業は除きますとか、生活の基本である食料品は免税ですとかにして頼めば国民だって納得します。

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