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国会での意見陳述-2第102回国会 衆議院大蔵委員会(昭和60年2月27日)傍聴記2月28日の読売新聞の朝刊を開き、紙面を一面から順に眺めていくと「視界」という囲み記事が目に入る。そこには、国会審議が全面ストップした中で唯一開催された大蔵委員会に、参考人として出席した飯塚毅会長の意見が掲載されていた。 「税理士の集まりであるTKC全国会の飯塚毅会長が『日本は脱税天国。サラリーマンの所得はガラス張りなのに、事業所得は不透明すぎる。国会の先生方は脱税者の味方なのか、まじめな納税者の味方か、見識が問われている』と歯にキヌ着せぬ議論を展開し、ふだんは威勢のいいセンセイ方も、たじたじ」と書かれていた。各参考人の基本的な意見の開陳が終わると、質疑応答に入るが、まず自民党の熊川次男議員から飯塚毅会長に、コンピュータを利用した悪質な脱税についての実態と、防止の法整備について質問をする。 翌日の読売新聞に「脱税ソフト、許さぬ――国税庁規制に本腰・指南の発売元に刑事責任も」の記事となって現れたのである。(寺田昭男『TKC会報』昭和60年4月号) 第104回国会 衆議院予算委員会公聴会(昭和61年2月15日)税負担の不公平を正すには、まず政治家自身が姿勢を正すべきであると提言した。 傍聴記(要約)2月16日付の朝日、読売、日経の記事「公述人発言要旨」を読んでみると、短い記事の中ではまとめ切れなかったのか、いささか歯がゆさを感じざるを得ない。というのは、会長が政治資金規正法の欠点を鋭く指摘した部分、会長が公述した5項目のうち、公の場で初めて意見を述べた重要項目であり、いわゆる「トーゴーサンピン」即ち政治家の租税負担率の低さ、不透明さに対して大胆かつ率直に意見を論述した趣旨についての理解と整理が行き届いているとはいえなかったからである。 「なぜピンが可能になるのか、それは政治資金規正法の第14条の政治資金収支のいわゆる会計監査人が、職業会計人と決まっていないこと、及び罰則を定めた第24条には、この監査人の監査意見に虚偽を記載しても処罰の対象とはならないようにされているからであります。人類の先輩、これは孔子でありますけれども、『本立ちて道生ず』、そう教えました。政治家がまず襟を正してこそ、国民はこれに従う次第であります」。 議場に走った衝撃は、私の背骨に痛みを伴ってひびいてくるものであった。K議員の顔がサッと青ざめる。腕組みし直す議員、意見書に目を走らす議員――。会長は常日頃と全く変わらず、一語一語を明確に、淀みなく進めてゆく。議長席の小渕恵三委員長は、背中をやや丸め、両手を膝の上にキチンと揃え、視線を机の一点に落として微動だにしない。過去のどの委員会のシーンよりも印象の深い記憶に残るシーンであった。(寺田昭男『TKC会報』昭和61年3月号) | |||||||||||