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“第三の開国”に勇気を-2

古くて新しい問題

大来そういうことになりますかね(笑)。

貿易摩擦は古くて新しい問題なんです。昭和44年、佐藤首相がワシントンにゆき沖縄返還を固めましたが、同時にニクソン大統領から「日本からの繊維製品の輸出をなんとかしてくれ」という要望が出て、佐藤さんは善処を約束して帰りました。あの繊維問題が貿易摩擦のはしりと言っていいでしょう。

続いて鉄鋼の対米輸出が問題になり、その次はカラーテレビ、やがて自動車の輸出自主規制へと発展してきたのはご存じの通りです。そのうちに「アメリカは日本の製品をどんどん買っているのに、日本は市場を閉鎖している。開放せよ」という摩擦が起こってきました。そのシンボルが牛肉とオレンジですね。

飯塚そうでしたね。

大来そこでたばこの輸入自由化になり、電電公社の資材調達の開放になったわけですが、さらに「輸入基準や認証制度を見直して外国製品が入りやすいようにせよ」と、一歩踏みこんだ要求になってきました。

今年1月、中曽根首相とレーガン大統領のカリフォルニア会談で、「日本はさらに市場を開放してほしい」ということになり、それにもとづいてモス方式といって4つの分野で日米の担当責任者が直接交渉する方式が要求されました。モス(MOSS)というのはマーケット・オリエンティッド・セクター・セレクティブ・アプローチ (Market Oriented Sector Selective Approach)の略で、「市場依存特定分野別交渉」と訳されます。

飯塚文字通りむずかしいことになったものですね(笑)。具体的にはどういうことをするのですか。

大来向こうのそれぞれの担当責任者が、電気通信関係については日本の郵政次官、木材・木製品は農林次官、エレクトロニクスは通産次官、医療品および医療機器は厚生次官と交渉するというものです。

輸出品の摩擦の方は自動車からエレクトロニクスに焦点が移って来ましたが、大局的に見れば摩擦は日本の経済が大きくなり産業の競争力が強くなったことから来ています。アメリカの対日貿易の赤字は昨年はほぼ370億ドル。日本の必要な米を全部輸入したとしても50億ドル前後ですから、これは大変な金額なんですよ。

飯塚アメリカが「もう我慢できない」と言い出したのは、理解できます。

大来去年11月の大統領選までは、選挙に悪い影響があってはという配慮からブレーキがかかっていたのですが、レーガン再選からは政府高官も議会もせきを切ったように一斉に日本に文句を言いはじめました。

飯塚一斉といえば、最近はヨーロッパ、それに声は幾分低いですが東南ア諸国、中国も対日赤字で日本を批判していますね。

大来ヨーロッパ――EC諸国の対日赤字は約100億ドルです。それに「日本はアメリカに対してはいろいろ譲歩しているが、ヨーロッパには配慮しない」という不満があります。

アジアでは、例えばタイの骨なし鶏肉問題。アメリカから輸入する骨つき鶏肉の関税は来年から10%にするのに、タイの骨なし鶏肉は18%で「日本はアジアを大事にすると言いながらやっていることは逆じゃないか」と批判されています。

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