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ドイツからみた日本の税制と商法-3

true and fair view 導入の経緯

飯塚会計指令法は、単に税法と商法との調整を図ったのにとどまらず、1948年(昭和23年)のイギリス会社法に盛られた true and fair view――真実かつ公正なる見解――という考え方を採り入れた。つまり一歩踏み出してヨーロッパ全体のためにイギリスの会計理論を13か条にわたって反復して採用したところに、特筆すべき性格があると私は思っています。

そこに至るまでに、ドイツの学者はイギリスの学者と10年ほど論争したのでしたね。

ダン事態は飯塚博士が言われるように動いたわけですが、我々の立場からするとこうなります。すなわち、イギリスがECにまだ加盟していない時期に、加盟諸国は会計に関するECの指令――第4、7、8、9号に沿って関連法規を改正する努力をしていました。それがほぼ終わった段階でイギリスが加盟したわけで、イギリスは大陸法を大幅に受け入れなければならなかったのです。

イギリスの法学者達は true and fair view については、イギリスが大きな貢献をした、と言っているようです。

しかし、それと類似した考え方はドイツの株式会社法にもありましたし、他の諸国の商法にもありました。

セービガー誤解を避けるために申し上げますが、ドイツ商法と税法の調整は会計指令法に則ってなされたばかりではなく、既に1977年のAO法(国税通則法)によって行われていたのです。

飯塚いずれにせよ、ドイツの商法と税法は適宜に調整が行われており、一致する条文がたくさんある。日本はその点ばらばらです。それが困るんです。

ダンドイツでは両者が一致するよう努力したわけです。

飯塚ドイツが羨ましいですよ。一番いい例は新しい商法の238、239条には、正規の簿記の諸原則が明記してある。それと同じ規定が国税通則法にもある。そうした整合性が日本では欠けているのです。

ダン飯塚博士がいかにドイツ商法にくわしいか、まざまざ分かります。

飯塚いやいや。

これには日本の立法の仕方にも問題があります。ドイツの会計指令法の場合、法案は国会に提出するはるか前に公表されましたが、日本では公表はぎりぎりになってからだから、国民は前もって研究することが出来ない。

ダンドイツでは、例えば会計指令法の場合、私たちは何年もかけて討議しました。通常の法律の場合は、新しい法律は計画段階で関係団体――税理士会などに当局から「見解を聞かせてほしい」と依頼状が来ます。それから関係官庁での公聴会、国会の委員会での意見聴取があり、そうしたプロセスを経て、まとまった法案が一般に公開されます。

飯塚日本では例えば税関係の法案は、普通その年の2月に公表されて4月末には決まってしまいます。

セービガー日本の政府がドイツのようなやり方をしないのは残念ですね。ドイツではダン博士の連邦税理士会は意見を聞かれ、対案を求められ、それが妥当であれば法律の中に織り込まれますがね。会計指令法の時も税理士会は影響力を行使しましたよ。

ダン日本の政府当局や国会は、専門家や関係団体の意見を聞かなくても立派な法律が作れるほど、能力のある人が沢山いるということですかね(笑)。

本誌それはどうでしょう(笑)。しかし政府の諮問が不十分なので、飯塚博士のような方が放っておけなくて、乗り出すことになるのです、今の日本は。

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