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ドイツからみた日本の税制と商法-4

英米法とドイツ法の違い

飯塚話を戻します。さっきダン博士がイギリスはEC加盟に伴って大陸法の考えを受け入れたと言われました。ところがイギリスは1985年の改正会社法でも、会計処理に当たっての適時性の原則は採り入れていない。これは何故でしょう。

ダンイギリスは商法と税法を厳密に分けていますが、大陸法を採り入れたと言ったのは商法の方なんです。

もっと大きな理由は、イギリスの法制は伝統的に不文律というか慣例を大事にします。ドイツ法と違って最後の一句まで厳密に表現することに一種の恐れを持っている。あるいは躊躇する。そういうメンタリティのためではないですか。

飯塚そのイギリスの考え方が影響してアメリカの会計理論の中にも適時性の考えがない。それを学んだ日本のプロフェッサーたちの本のどこを見ても「適時性」が出てこないのです。

ダン釈迦に説法ですが、アングロ=サクソン法とゲルマンないしローマ法には大きな違いがあります。ゲルマン法はポジティブといいますか、法律の条文で何もかも規定しようとする傾向があるのに対し、アングロ=サクソン法は慣例を大事にする。すなわち法律の条文では基本的なことしか書かず、問題が起こると裁判で処理する。その判例で内容を充たしてゆくわけです。そこから両者の違いが出て来ます。

飯塚仰言る通りですね。

ダンいまECで問題になっている食い違いは、適時性とか true and fair view といった原則ではなく、もっと具体的な問題です。例えば機械の減価償却について、どの時点で原価を査定するかをめぐって意見の違いがあります。

飯塚分かりました。

税理士から公認会計士への道

飯塚ところで、ダン博士の言われる会計指令法の中には、ドイツ公認会計士法の改正条文が22か条あり、その中に税理士、弁護士を公認会計士にするための試験を制度化しています。この制度はドイツで順調に定着していますか。

ダン従来、株式会社の会計監査は公認会計士しか出来ませんでした。ところが、ドイツでは圧倒的に数の多い有限会社も会計監査をしなければならないという法改正があり、このドル箱を公認会計士だけが扱うべきか、あるいは弁護士、税理士にもやらせるかをめぐって、両陣営の間で長らく論争がありました。

飯塚そうですね。

ダンこの論争は会計指令法が討議され、出来上がるまでの10年ないし12年にわたって続いたわけですが、セービガー博士や私などがいろいろ努力して、税理士、弁護士でも試験を受ければ公認会計士になれる道を開いたのです。その結果は上々です。

飯塚数字的にはどうなっていますか。

ダン2、3,000人の税理士が試験を受け、公認会計士の資格を取りました。これはドイツの税理士の6ないし7パーセントに当たります。これは西ドイツ連邦税理士会の努力の賜物と申してもよいでしょう。

この簡易試験は今年末までしか有効ではありませんが、私たちは心配していません。つまり、簡易試験ほど簡単ではないが、ある程度の試験を受ければ同じように資格は取れるからです。この業界で仕事をする人は、まず税理士になり、3年ほど経験を積んでから試験を受け、公認会計士の資格を取るようになるでしょう。

飯塚それは結構なことです。日本では今、税理士会と公認会計士協会が同じ問題で正面衝突している最中です。

セービガー日本の税理士は5万人余りと聞いていますが、公認会計士は?

飯塚約8,400人。非常に少ないのです。西ドイツの株式会社は連邦統計庁の発表によれば2,262社。有限会社は37万社弱と圧倒的に多い。それに対して、日本は資本金2,000万円以上の株式会社だけで19万3,000社、ドイツの実に85倍です。

ヨーロッパの動向に合わせて、この多数の株式会社を全部監査の対象にすると、日本の公認会計士の数は余りにも少なすぎる。

セービガー有限会社が多く株式会社が少ないのは、ドイツの特徴かもしれません。

飯塚いや、日本の有限会社はドイツの3倍あります。

セービガー合名会社、合資会社は?

飯塚それは非常に少ない。

セービガー有限責任ということで有限会社が多いのでしょうね。

飯塚そうです。

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