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命懸けの行・財政改革-2

概算要求はゼロ・ベースで

中曽根ええ。

例えば、あの「日露戦争」の時、大山巌総司令官の満州軍をはじめとする25万の日本軍と40万のロシア軍が奉天(ほうてん)(現在の瀋陽)で対峙し、大決戦に突入しましたね。ロシア軍は圧倒的に優勢だったのですが、ロシア軍の総司令官クロパトキン大将は判断を間違って、作戦を変えてしまった。その結果、日本軍は大勝利を得、クロパトキンは敗北の責を問われ左遷させられてしまったわけですね。

ですから、私どもも、ここで勝って、“クロパトキン”を北に追いやらなきゃあいかん。そういうもんだと思って、いま、真剣に取り組んでいるところです(笑い)。

飯塚ははあ、なるほど(笑い)……。

中曽根ええ。そのために、でもありますが予算編成のやり方を変えようと、渡辺大蔵大臣とも相談しましてね、さきほど話が出ましたように、いつもならば57年度予算の概算要求というものと、どのぐらいの上・下ワクを設けるかというのは、7月29日頃に行なわれるんです。

飯塚それが6月上旬に早まる――。

中曽根ええ。6月の上旬にもっていっちゃおう、と。

それで、57年度予算をみてみますと、おそらく国債費で約7兆8,000億円。それから地方交付税で約9兆3,000億円、この2つを合わせると17兆1,000億円ぐらいのものがね、一応、“天引き”されちゃうわけです。

そうすると、46兆円とか50兆円の予算を組んだにしても、その大部分は国債と地方にとられてしまう。

まあ、地方のお金も中央なみに、多少は我慢してもらうということも、余地としては残っているでしょうけれども……。

本誌大蔵省が年初にまとめました中期財政展望をみますと、57年度の税の自然増収は4兆7,000億円どころを想定しているようですね。

ですが、59年度までに3K(食管・健保・国鉄)のつぎに出る“赤字国債”ゼロにするとなると、自然増収分のうちの1兆8,300億円を国債発行減にあてることになり、国債の元利償還のための公債費、それから地方交付税も増えてますから、一般歳出増のために使える金というのは、わずか5,000億円ぐらいしかないわけですねえ。

中曽根そうです。

ですから、そうなると各省庁の概算要求は“ゼロ・ベース”になりますね。

それから発展途上国に対する経済援助、これは3年で2倍にするという約束をしてますし、米国との関係で安全保障の問題がどういうことになるのか。また、科学技術の問題とか、いろんな問題が山のように盛り上ってくる可能性が、無きにしもあらずという、非常に厳しい予算になるでしょうね。

そこで、6月の上旬に来年度予算要求のシーリングを決め、各省庁で“荒ごなし”してもらい、7月の上旬に出る臨調の第1次答申で、中味の裏づけをそれでもっていく。8月の末までには各省庁の57年度予算の概算要求が、正式にでてくる。

で、そうした過程で法律を改正するものが出てくるだろう、補助金その他等にせよ……。だから、6月から8月の下旬までの間に、法律改正の問題まで含めて、みんな検討してもらう。法律を改正するためには、審議会を通さねばいかんという、そういうものもありますが、そういうものまでやる。

本誌これは、大変なことですねえ。

中曽根ええ。8月末には、法律改正要綱も全部一緒に出してもらいます。

そして、臨調の答申の内容にもよりますが、行財政改革のための「臨時国会」というものが予想される――。

飯塚秋に、ですか。

中曽根ええ。10月の初め頃になるかもしれませんねえ。で、法律として、一挙に勝負に挑むということが一応、想定されておるわけです。

だから、今年の夏は、“熱い夏”になりましようね(笑)……。

本誌いやあ、“沸騰(ふっとう)”するかもしれませんよ(笑い)……。

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