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(写真出典:飯塚毅先生追悼集『自利トハ利他ヲイフ』386頁)
命懸けの行・財政改革-8
人間は“癌の特効薬”になりうる
飯塚そうなんです。ですから、国会が一段落しましたら、大臣にぜひ、栃木県の矢板市を視察していただきたい。
矢板市役所は私どもの開発したコンピューターを導入しましてね、住民票をもらいに行くと20秒で市民に手渡されるんです。
中曽根ほほう、そうですか。
飯塚はい。窓口の東芝製の機械1台で、住民票から納税関係書類までが、パパッと出来ちゃうんです(笑い)。
中曽根ほう。中小企業の工場なんかもロボット化が進んでますが、あれをみてると事務処理の2〜3倍は楽に出来ますね。
飯塚出来ます。
本誌ただ、問題は行財政改革の1つの方策としてコンピューターを導入し、省力化を図る場合、人が余るわけですね。そうすると、自治労あたりが黙っていないでしょう。
そこらを、どうするかですね。
飯塚コンピューターを入れたら、市役所の窓口業務も相当省力化される。
この点は今後の地方官庁の財政問題を考える場合に、非常に重要だと思うんです。
中曽根その矢板市の機械は、いくらぐらいのものですか。
飯塚1,500万円ぐらいです。
中曽根ほう。リースレンタルだと女の子の給料で間に合うんじゃないですか。
飯塚べら棒に人件費が安くなります。
自治省の方も視察に来て、驚いていましたね。北海道の札幌とか九州の佐賀県あたりからも来ていますが、どういうわけか早速導入しようというところと、良いのは分るがすぐには無理だというところがあるようです。
中曽根どうしてですか。
本誌それは、自治労、労働組合が恐いからじゃないですか(笑)。
飯塚そうです。
中曽根うーん。
しかし、地方の市町村なりが、そういうコンピューターを導入して、その結果、人が余るというのであれば、そういう人は機械ではできない仕事、例えば政策立案的な仕事とか、機械に出来ない市民サービスの仕事というのは沢山あるわけですからねえ。
飯塚そういうことです。機械を入れて省力化を図り、人員を適材適所に配置し直し、節税に努めながら住民サービスに奉仕する、これが、やる気があればいとも簡単にできるわけです。
中曽根そうですねえ。
機械化、省力化でもって人が余るのであれば「石油を燃料にしないで薬にしろ」というようなものですよ。日本にとって石油は貴重ですが、燃やしちゃったんではそれまでなんで、石油化学なりの技術を駆使して人の命を救うクスリにしたらいい。あるいは、それが癌の特効薬になるかもしれないではないですか……。
飯塚大臣、時間の余裕が出来ましたら、ぜひ視察してみて下さい。驚きますから。
中曽根ああ、近いうちに、ぜひ矢板に出かけますよ。
それと飯塚さんのとこの宇都宮のコンピューター・センターも視たいですね。機密の漏洩防御措置が5重になされているとかですが、実際にこの目で見たいものです。
飯塚それはもう、いつでもおいで下さい。お待ちしております。
本誌2回にわたる長時間対談をありがとうございました。
これからが“本番”なわけですが、大臣の御健闘をお祈りいたします。
(編集主幹・木場康治)
(VANGUARD 1981年06月号より転載)
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