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(写真出典:飯塚毅先生追悼集『自利トハ利他ヲイフ』386頁)
サバイバルの秘訣-5
よいパートナーをつくる
飯塚なるほど、そうでしたか。
それと、カシオさんは賢明だと思うのは、ご自分のところではLSIを作ろうとされないことですね。
樫尾自分で作らなければだめかな、とたえず考えました。しかし、私どもの場合は信頼できるパートナーに恵まれたんですね。日本電気さんとか日立さん。東芝さんも「カシオさんがそんなにやられるなら」ということで計算機から手を引き、パーツに徹しられました。
飯塚なんでも自分で作ろうとしたら失敗しますよ。投下資本も大きくなりますしね。
樫尾申しあげたいことは、よそでパーツができたからそれを応用しよう、ということでなく、どういう素子でどういうパーツにするかを共同研究したんです。例えばICが、あるいはトランジスターができた時、私どもは「もっと集積度を高くできないか」と、パーツメーカーに要求し、相談しました。独自の回路を設計しましてね。それをかなえてくれたので、私どもが自分で作らなくてもよかったのです。
飯塚それも立派だ。
樫尾さっき、コンピューターをすぐれたソフトウエアで駆使されたお話をうかがいましたが、ただいま申しあげた素子、あるいはパーツの場合も、利用の仕方は、パーツのメーカーより私どもの方が詳しいんですね。そしてメーカーにすれば、ICでもLSIでも安定して買ってくれる客が有難い。私どもは国内では一番大量に使わせて頂いた。それで自然に、とてもよいパートナーの形態になったわけです。私どもにとって、これはラッキーでした。先方にとってもそうだと思います。
飯塚電卓で、いまカシオさんのマーケットシェアはどのくらいですか。
樫尾国内では60パーセントです。世界的に見ますと、私どもとシャープさんでかなりの分野を二分の形で、そのほか、デジタルの時計は電卓を上廻る状態です。
本誌そのデジタル時計は、出たとき私も求めました。
樫尾それは有難うございます。あれはLSIを使っています。
あれこれ合わせますと、私どもの使うLSIは膨大なものになります。そうすると、量産メリットがありますから、パーツメーカーさんにもお願いをしやすくなります。先方は安心して、私どもを「よき消費者」と認めてくれます。また、そういう見通しがあったので、私どもは自分でLSIを作らなかったのです。
飯塚よいパートナーがいないと困りますね。
私どもTKCの場合、電算機で打ち出す用紙(帳票)や各会計事務所で使う伝票について、よいパートナーがいないのです。分量が多過ぎましてね。年間に使う伝票だけでも、重ねると富士山の20倍の高さ分を供給しているのです。
そうなりますと、一般の印刷会社では間に合いません。仕方がないから、泣く泣く埼玉県に直轄の印刷工場を作りました。
樫尾ホーッ、そうですか。
私どもでも、電卓と時計のため、毎月500万個以上の半導体を発注しています。日本は半導体の分野で世界に冠たる地位にありますが、私どもの会社も、大ロユーザーとして、それにいささか貢献しているわけです。
ご存知のように一時、半導体の供給が需要においつかない時期がありました。しかし他を断ってでも、私どもの方には供給してくれました。そういうパートナーですから安心です。
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