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(写真出典:飯塚毅先生追悼集『自利トハ利他ヲイフ』386頁)
「税制抜本改正」を語る(上)-6
経済の構造変化に即した税制に
財政再建は7割がた実現した
村山これを直すのは、理屈の上では簡単です。歳出の伸びを経済の名目成長率より下にすればいいのです。
「財政再建と騒いだが、効果はあったのか」と言う人もいますが、数字は雄弁で、税収比率はかつての61%から、今年度当初予算では75%に回復、国債依存度も20%に下がっています。
回復は着実です。財政再建は7割がた成功した――私はそう見ています。
飯塚昨年1月号の「バンガード対談」は、臨調(臨時行政調査会)の元締めである土光さんをゲストにお迎えしたのですが、土光さんはその時、「財政再建は目標の半ばを超えた」と言っておられました。
村山なるほど。観測は大体一致しますね。
飯塚しかし、「まだまだ」という人もかなりいますね。たとえば赤字国債を相変わらず出しているじゃないか、と……。。
村山主計局は、財政法をタテにとって、赤字国債は財政法違反だからおかしい、ゼ口にするという旗印を掲げていますが、そうはいかないでしょう。
そもそも、赤字国債も建設国債も国の借金であることに変わりはないのです。
ただ、建設国債の場合は、見返りになにかが生まれます。その資産は企業の設備投資と違って経済成長に直接は結びつきませんがね。
各省から提出される概算要求を切る時、経常経費も資本経費も一緒にバッサリ削っていますね。本当は、赤字国債を切るというなら、経常経費だけ切ればいいのです。しかしそれでは追いつかないから資本経費も切っている。道路建設の補助率などでね。
しかし、内外の状況を見れば、内需拡大は至上命令だし、65年までに赤字国債ゼロというのは無理でしょう。あれは主計局サイドのスローガンで……。
飯塚うむ。
村山本当の問題は、赤字国債、建設国債合わせての国債依存度がどれだけあるかなんです。
現にこの両国債を予算制度の中で区別しているのは日本と西独だけです。しかも、償還財源を積み立てるやり方――償還年数60年と見て国債残高の1.6%を国債償還特別会計に繰り入れる――は、西独にもないのです。
飯塚たしかに、赤字国債だ建設国債だといっても、一般の人にはよく分からないでしょうね。
そもそも赤字国債は、文字通り歳入の不足を補うために発行される公債だが、財政法第4条によって公共事業費、出資金、貸付金に使途が限られる。一方、こうした公債は建設国債ともいわれる。歳出財源を調達する手段ということでは同じものだが、法律(特例法)の定める限度におさまっていれば建設国債ということになっています。
定義としてはどうもすっきりしない(笑)。先生の言われるように、国債を抑え、財政の健全化を図りたいという主計局の悲願から出た名分――スローガンと考えると分かりやすくなりますね。
村山こうして見てくると、税制の抜本的改革ということは、負担率――社会保障負担を含めて――と同時に、財政というワク組み、現在なら財政再建とのつながり、を考えなければなりません。
そして、増税による財政再建は、国民がとても受け入れそうにありません。だから、いまやっているのは、歳出力ット――小さな政府をつくるというやり方です。
それでうまくゆけば結構ですがね。
飯塚正攻法とはいえるが、これ一本槍というのは知恵の使い方が足りません。また、さっきおっしゃったように、内外の状況もそれを許さなくなっている。
ではどうするか、ですね。
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