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「税制抜本改正」を語る(上)-7
経済の構造変化に即した税制に

世界最高の累進税率構造

村山59年の村山調査会は、財政再建を政治的な歳出カットではなく、純粋に理論的に考えたのです。

成長率を高めるという方法はありますが、これだと計算不可能で実証できないので、結局、(1)歳出カットでやる場合(2)増税でやる場合(3)上の2つを混合した現在のやり方を続ける場合――この3つについて、65年まで各年度ごとにどうなるか、予想数字を出しました。

この作業が、今度の「税制の抜本改正に向けての中間報告」の土台になっているのです。

飯塚「ローマは1日にして成らず」ですね(笑)。中間報告のポイントを読者に説明して頂けませんか。

村山いま日本では、租税負担率は25.2%です。OECD(経済協力開発機構)諸国の中ではシリから2番目。社会保障負担率は10.8%でシリから3番目。日本より低いのはスペインとトルコだけです。

それにもかかわらず、国民の中で負担が重いという不満が多いのは、どこからくるのか。

飯塚税制が経済の実体から乖離(かいり)しているから?

村山その通りです。

実体経済の変化を調べて見ると、産業構造が完全に第3次産業に移っているのです。就業構造から何からね。

消費の方も、サービスの消費が5割を超えている。またサラリーマンと商業、農業などの自営業者の割合が変わって、いまは全体の8割がサラリーマン。

所得が平準化したことも驚くばかりで、世界の先端を走っています。

飯塚社会主義国を別にすれば、こんな国はありませんね。

村山ところが、直間比率(直接税と間接税の割合)を見ると、間接税は戦前で65%、シャウプ勧告当時が45%なのに対し現在は26%。

他の先進国をみると、アメリカは地方税の中に消費税が入っているので、連邦だけについていえば直接税が90%ですが、これは例外。英国は4割が間接税で、西独は5割、フランスは6割です。そして、個人所得税の割合は大体4割というのが世界の相場です。

こうして見てくると、日本は、個人の所得が平準化しているうえに、税の負担率が低いのですが、累進構造は逆に1番高いのです。

飯塚先程の“大蔵省社会主義”の嘆きが出るゆえんだ(笑)。

村山税率の構造は、地方税を入れて、日本15〜88%、アメリカ11〜50%、英国30〜60%、西独22〜56%、フランス50〜65%です。

飯塚日本の88%というのは群を抜いていますね。私も身――というより痛みに覚えがありますが(笑)。

村山刻み方がまたすごい(笑)。国税が15段階、地方税は13段階。

所得税と住民税を合わせて考えたことがあるのか、と疑いたくなりますね。

飯塚払う方にとっては同じ税金ですのにね。

村山支出構造をみると、日本では年収500万円から800万円くらいの中堅層が、教育費や住宅ローンの支出で苦しいところへ、税金の圧迫が1番激しいのです。

極端にいうと、独身者が1番楽です。(笑)。

飯塚課税最低限が高いですからね。おっしゃる通りで“独身貴族”という言葉まであるほどです。

村山課税最低限が高いことが累進構造を高める原因になっています。全体としてみて、課税所得と非課税所得の割合は1対2ぐらいになりますから、納税者としては所得が5%上がれば課税所得とすれば15%上がる計算にもなるのです。

もう1つ。給与所得控除が、良し悪しは別として、350万円までは3割、600万円までは2割、1,000万円までは1割、1,000千万円超は5%という風に、収入が上がるにつれて、控除率が低くなる。

59年度と60年度についていうと、給与が5%上がると、課税最低限と給与所得控除の関係で課税所得は10%上がっています。倍ですね。そして税率は課税所得に、刻みで掛けてゆきますから、税額は11%以上あがります。

飯塚すさまじいですね。ちょっとばかり給与が上がったばかりに、税金が高くなって手取りはかえってマイナス――そんな悲劇がまま起こるわけですね。

村山そういうことです。

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