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(写真出典:飯塚毅先生追悼集『自利トハ利他ヲイフ』386頁)
国家百年の計-3
今こそ確立せよ日本の税制
マル優廃止へ全方位の提案
飯塚そのマル優の改革について、「大蔵省は、小額利子申告不要制度と低率分離課税および一律分離課税の3案を、8月中に政府税制調査会に提示することを決めた」と読売新聞が報じ、このうち本命は「小額利子申告不要制度」とありましたが……。
水野低率分離課税と一律分離課税は、これまでも税調などで一部審議されています。私たちの立場からどれが本命というわけにはゆきません。
飯塚もし、小額利子申告不要制度が本命だとすれば、全方位をにらんだ苦心の案だ。
本誌郵貯を除いた民間金融機関の預金について、年間20万円以下の利子については一律15%程度を源泉徴収し、20万円を超える分については35%の源泉分離課税か他の所得と合わせた総合課税の選択制にする。
そして、利子所得を含めた所得総額が課税限度に達しない場合は、確定申告で源泉徴収分の還付を求めることができる。
郵貯については、1人あたり300万円の限度枠を残すかわりに、非課税扱いはやめ、15%程度の低率分離課税にする、というものらしいですね。
要するに、小額貯蓄者への優遇制度は残しながら、マル優そのものは廃止する。これによって平年度で1兆円強の増収となる。金融機関の限度管理事務も簡素になり、同時に厳格にできるというわけですね。
飯塚限度を超えたマル優預金は、正確にはつかめないが、大変な額があることは間違いないから、1兆円強という見積りは極く控え目な数字ですよね。
ともかく、現在のマル優の不正利用は目に余ります。不正利用というのはおだやかな表現で、これは明らかな脱税なんだ。
前に披露した話ですが、西独大蔵省のムース課長が来訪した時、「お国では脱税はどれくらいあると推定しているか」と尋ねたところ、「国家予算の1%くらいかな」との答え。「日本では?」と問い返されて、「限りなく国家予算に近い」と答えたものの、彼我の余りの差に情けなかった。
水野憂国の士、飯塚さんのお気持ちは痛いほどよくわかりますが、それは少々オーバーですよ(笑)。
主税局としても、国家百年の計に立って、脱税封じを積極的に推進していることはご理解頂いているものと思います。
飯塚それは承知で、敢えて申しあげたい。ドイツの場合、脱税防止の法制の網がガッチリかぶせてある点を日本は学ぶべきだ。この小額利子申告不要制度のような税制改正が実現し、脱税封じが前進することを期待したい。
本誌経団連は逸早く4月に、「所得税、法人税減税の財源にマル優改正を」と提言していますから、金融機関関係は抵抗ないでしょう。問題は郵政省と国会のいわゆる郵政族議員ですが、300万円の限度枠を残し、低率分離課税という妥協案が用意されているわけですから、最終的には通りそうですね。
小額利子申告不要制度が本命かどうか、現段階では微妙な問題でしょうから、水野局長には敢えてコメン卜は求めません(笑)。
水野ご配慮有難うございます(笑)。
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