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湾岸戦争-6
企業経営への教訓

日本人の名誉が問われる

佐々一見、実害はなかった。円はあのとき上がりました。株もね。だけど、目に見えないところで失ったものが大きい。

第1は日米の信頼関係を傷つけたごと。真剣に相手にされなくなったでしょう。

飯塚アメリカも表面はつくろっていますがね。実質はそうじゃない。ブッシュ大統領の訪日延期はその最たるものでしょう。それで海部さんがロサンゼルスまで出掛けた。向こうは正副大統領が西海岸まで出て来ることによって一応国際儀礼は尽くしたが、それだけのこと。「ジョージ・トシキ」も「グローバル・パートナーシップ」も出なかった。

佐々そうです。

2番目は、日米の間だけでなく国際的にも「金儲けだけの国」とさげすみを受けた。

3番目は、いざというとき、日本の政治に決断がなく対応力がないことが国民にも知れわたって、大きな不安を与えた。

この大きなマイナスをどうして回復するかが今の課題です。「湾岸は無事終わった」と思う人がほとんどですが、実は大きな危機がすでに始まっているのです。

飯塚不作為のつけを払わなければならない。

佐々マスコミは「政府はけしがらん。海部はだらしがない」と批判しています。事実そうでしょう。

だが翻って考えると、平和が前提という国をつくって、その意味で日本は見事に成功した。同時に非常事態への対応というか、リーダーシップを発揮出来ない政治体制をつくってしまった。だから問われているのは日本政府ではなく、日本人全体なんです。

日本人の名誉が問われているのです。

飯塚本当だ。

政治的決断のシステムを

佐々大事なことがもう1つあります。それは、言ったことは必ずやらねばならないということです。

8月29日に、海部首相は「民間機と民間の船で輸送を手伝う。100人の医官を派遣する」と言いました。関係国に文書で約束したわけではありませんが、一国の総理がテレビや新聞で世界に対して公言したのですからね。それを実行しないと結果はどうなるか。

飯塚個人の場合でも全く同じだ。特にアメリカでは「ライヤー(嘘つき)」といって一番軽蔑される。

佐々日本人の名誉が問われていると申したのはそこなんです。

飯塚根本的な問題に逢着しますね。ではどうしたらよいか。

佐々政治の仕組みを変えないと、何度でも同じことが起こります。やはり決断の構造を政治に持ち込んでおかねばなりません。

飯塚日本経済の強さの秘密の1つは、インフレに応ずる賃金上昇システムとか、社会保障制度の整備など「ビルトイン・スタビライザー」がうまく機能していることです。政治の分野でも「ビルトイン・デシジョンメイキング・システム」が必要だ。「海部首相だけの問題ではない」という佐々さんのと指摘は卓説です。

佐々海部さんを選んでしまった日本の政治、その政治を選んでしまった日本国民。その国民の政治意識、国際感覚が問われています。

「同盟国アメリカとの信頼関係がかかっている。国際信義を守るため、言ったことは実行し、できないことは言わない。そのルールでやれ」と、私は力説したのですが、「調子のいいことを言って」という反応がほとんどでしたね。

飯塚佐々さんが言われるように、一本筋が通っていなければいけないんだ。そのうえで情勢に柔軟に対応すればいいのだ。ところが妙な現実主義論が横行して……。

佐々幕末にペルリ提督が黒船を率いてやって来て日本開国の和親条約を結びましたが、そのときワシントンに送った意見具申の中で、彼は日本人をこう分析しています。

第1は物事を決定しない国民である。第2は平気で嘘を言う。第3は武力で威すとすぐ言うことを聞く。軍艦4隻では足りないから増派してほしい。

飯塚ハッハッハ。今も全く変わっていないですね。

佐々残念ながら140年たっても同じことをやっています(笑)。

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