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湾岸戦争-8
企業経営への教訓

not to make the matter worse

佐々仰言る通りです。

アメリカは湾岸戦争で大勝しましたが、財政・貿易の双子の赤字はそのままだし、国内の麻薬問題も解決の目途が立たない。アメリカの病気はそのままなんです。

改善されたものがあるとすれば、ベトナム戦争の後遺症が治ったことぐらいでしょうね。「アメリカはやはり世界一」だという自信の回復。星条旗が町中に林立していたのに驚きました。

本誌勝利の直後だったのですね。

佐々家族連れを見ると子供はみんな小旗を持っている。青年は背中に星条旗をかけてバイクで走っている。ワッペンも国旗をデザインしたもの……という調子でした。

これまでは問題に対して「自分に原因があるんだ」と思う部分がありましたが、自信を回復した反動で「俺に対して何だ」という方向に振れる危険性もあります。

飯塚多分にある。

佐々だから日米間の懸案事項を積極的につぶして行かなければなりません。こちらから積極的に。日米関係は冷えているということを認識すれば、リカバリー・ショットはまだ効きます。

飯塚効きますか。

佐々効きます。それがさっき申した「悲観的に準備し楽観的に対処する」ことなんです。必ず克服できると考えるのです。企業経営もそうでしょう。最近のバブルの破裂のように負け戦が始ったときはどこかで被害を食いとめ、そこから後退しないという最小抵抗線をつくって……。

飯塚“not to make the matter worse”ですね。そういうとき、アングロサクソンは冷静だ。彼らの知恵といえるでしょう。

佐々そのときリーダーは楽天的にならなければいけません。「あすは明るい。なんとかなるよ」と言わなければ総崩れになる。私は、いわば負け戦を盛り返す役ばかりやって来ましたのでそれが分かります。

飯塚負け戦ですか。

佐々飛行機をハイジャックされ人質を取られると、そこからマイナスが進行しているわけです。それをどうやってゼロに持ってゆくか、ですからね。

本誌先見の明と決断に欠けるリーダーを補佐するのも同じですね(笑)。

成り金の生き残る道――慈善

佐々昭和天皇の御大喪の礼もうまくいって当たり前、という仕事でした。どうやって何もなくするか。悪いことをうんと想定してそれを予防していった。警備に相当の金がかかりましたが、あれはただのムダでなく価値あるムダだと思います。

飯塚その通り。人生には、世の中にはそんな場面がしばしばある。

佐々その意味で日本はこれから色々なお金が要るでしょう。それを惜しんではいけません。保険と同じでね。

飯塚私は日ソ関係の団体のいくつかの顧問をしているのですが、その1つがソ連に生活物資を緊急の見舞として送ることになった。ところがその資金が250万円しかないという。野党の政治家が理事長、与党の政治家が会長の団体なんですがね。私も見かねて協力させていただきました。

佐々そうした民間レベルの善意の協力に値打ちがあるのです。私は湾岸戦争によって生じた難民の救済に日本はもっと力を入れよ、と叫んで来たのですが、民間のボランティアを組織することになり、近く発会式をやります。いざというときに間に合うよう、あらかじめ組織をつくっておくのです。

飯塚結構なことです。

佐々クウェートやイラクに出稼ぎに行っていたアジア各国の人たちの帰国輸送を援助しましたね、日本が。あれは感謝されていますよ。

もう1つ、日本はアラブの人たちを敵に回してはいけません。戦後40何年、繁栄してくることが出来たのはアラブの石油のおかげなんだから。この石油は王族や独占体が支配しています。だが民衆に対して善意を示さなければなりません。

そのためには日の丸の旗を立てた船なり飛行機なりで行って、救援物資を日本人自身が配るんです。

飯塚そう。

佐々クウェート政府が発表した感謝宣言に日本の名が落ちていました。あれは無意識のミスではありませんよ。「不注意で忘れた」と向うは釈明していますがね。

飯塚忘れたとは思えない。

佐々クウェート政府だけでなく、アラブ人が「なんだい日本人は」と思い始めています。救援物資を送ったが微々たるものでしょう。国内では送りたいという個人、団体、企業があっても送る手段が用意されていないのでね。

アメリカの高官が言っていました。「日本人は頭がよくて勤勉で、何をやらせても成功してしまう。それは認める。だがいわば一夜成金の日本が世界で生き残る道は1つしかない。それは慈善だ」と。

飯塚それは的を射ている。持てる人間は施さなければならない。それは人類普遍の原則だ。仏教もキリスト教もイスラム教もそれを強調している。

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