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「税制抜本改正」を語る(下)-4
脱税防止こそ切札

方向――サミット構成国の平均値

飯塚野人の習い性ですよ(笑)。

いま、日本の税制の方向として、「サミット構成国の平均値」と申しましたが、私はこれらの欧米先進国のやり方に手放しで追随しようと言っているのではありません。

日本は1世紀ちょっとで、これら諸国が近代の数世紀――その根は中世、さらに古代に及びますが――営々として達成した政治・経済の体制に肩を並べました。経済では、最近は日本の方が能動的で、その反作用として向うの方から「日本の文化が問題だ」という立ち入った動きさえ出ています。

本誌そういう相互浸透の時代ですね。

飯塚政治・経済の体制はその民族の文化と深くからまっていますが、技術的――科学技術の技術でなくあえていえば手口といった意味で――な側面もかなり大きく、それは普遍的なものです。

脱税抑止の方策を説くとき、私が欧米諸国のとっている方策の具体例をあれこれ開陳しているのも、そういうことです。

本誌平たくいえば、脱税の手口に対して効果的な脱税防止の手口は、近代国家のキャリアが2、300年長いだけ、欧米諸国の方が進んでいる。その経験を参考にしないのは損だ、ということですね。

飯塚脱税の穴をふさぐ努力――国家的努カ――をしていないのは日本が1番ですよ。

税金をとるには、まず納税有資格者の範囲を客観的に確定することが必要ですが、日本はそこが法的にはきわめてあいまいです。欧米各国は、ここを深刻に研究し、立法化しています。

例えば西独では、自由業や農林業を含め、開業、転業、移転、廃業などすべての事業上の変動について、税務署、市町村役場、登記所に法定の様式で届け出ることが国税通則法や営業法で義務づけられています。そして、違反は1,000〜1万マルクの罰金あるいは1年以上5年以下の懲役です。ここまでやれば、納税有資格者はほぼ100%把握されますね。その上で、申告書の提出義務を本人に告知するのです。

本誌自ら懲税の網の目に入らなければ、事業・商売ができないということですね。

飯塚フランスでは、所得の有無に関係なく全世帯に申告書が送付されます。カナダでは、大蔵大臣が赤児を含む全国民に申告書提出を求める権限があり、その申告書には社会保険証の番号記入が義務づけられています。

アメリカでは、年間の総収入が1,000ドル以上の人にはすべて確定申告書を提出する義務を負わせています。税法学でいう総収入基準による申告制で、非常にすっきりしています。

本誌日本の税務当局は、あいまいな法の規定でこれだけの大世帯をまかなう税金を集めているのだから、そのカンと努力は賞賛されてしかるべきではありませんか(笑)。

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