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「文化摩擦」回避の道-2

会計の分野でも「摩擦」が起こる

佐藤この話はあとでまたということにして、お目にかかったら伺おうと思って来たことがあります。ご専門の会計の分野で、日米はどのような違いがありますか。

飯塚周知のように、戦後の日本の会計は他の多くの物事と同様、アメリカから学びました。ですからアメリカの会計の特徴が深く浸透しています。

だが学ばなかったものもあります。例えば向こうの内国歳入法の446条の施行規則には generally accepted accounting principles「一般に認められた会計の原則」という言葉があります。これはFASB(Financial Accounting Standard Board)――財務会計審議会と訳しますが――に主として決められていますが、積もり積もって約1,000頁あります。

日本でこれに相当するものは企業会計原則、株式会社の計算規則と称するものなどですが、全部合わせても2、30頁くらいのものです。

佐藤なぜそうなっているのですか。

飯塚怠慢です。驚くべき怠慢。

佐藤それでも経理事務は間に合っているのですか。

飯塚ええ。まあどうやらね。私を除いては誰もギャアギャア言いませんから(笑)。私は国会に参考人として呼ばれても指摘しますし、海部総理にも何度か言っているのですが。

佐藤一橋大学で習った会計学はドイツ式でした。アメリカの大学院で勉強したときも、ドクターコースに入る前、科目の1つに会計がありました。その程度の経験ですが、アメリカの場合は1つのケースがそれ自体、法律みたいになってゆく。そんな性格がありますね。

飯塚コモンローの国ですから。コンベンション――慣習がいつの間にか法的な権威を持つようになる。

佐藤すると、ドイツ流とアメリカ流がうまく合わなかったのでしょうか。

飯塚仰言る通りです。つまり日本の企業会計原則の一般原則の中には、「企業会計は正規の簿記の原則に従わねばならない」とあるが、この「正規の簿記の原則」が問題なのです。それはドイツ法の概念です。ドイツでも、この原則は膨大な分量――500項目くらいあり、アメリカの会計原則集に匹敵するでしょう。

日本の会計は戦前はドイツ、戦後はアメリカと両方の会計学から浸透されながら、原則あるいは体系といった歴史の重みのあるところは巧みにすりぬけて、器用に実用的な会計を拵(こしら)え上げた。それはそれで有用でしたが、いつまでもこのままでは収まりませんよ。

佐藤そうですね。

飯塚「日本の特殊性」と弁解して来たことが段々通用しなくなっていますね。会計の分野でもいずれ同じことが起こりますよ。文化摩擦の1つとして槍玉に上げられて。

佐藤すると、飯塚会長は予言者だったということになりますね(笑)。

本誌実は前にも当対談で「荒野に叫ぶヨハネ」と評する人がいました(笑)。

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