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「文化摩擦」回避の道-7互恵主義、「お返し」の精神で本誌TKCの関与先企業は45万社。既に海外へ進出した企業、これからという企業は相当な数になると思いますが……。 飯塚TKCには国際部があって、関係する会社の国際化を図っています。海外進出を希望する企業は多いですね。また、どこへ出しても通用する企業ばかりです。ただ経営者のほとんどが英語が喋れない。 本誌日本の不十分な英語教育のツケがいま廻ってきた感じですね。 飯塚会計人もそうですよ。 本誌それをクリアして進出してもトラブルが? 飯塚あります。意思疎通が十分でない、いや、お互いに誤解し合ったためのトラブルがかなりある。訴訟沙汰になったり。 本誌いわゆる「文化摩擦」は、今年はさらに問題になるのではないでしょうか。 佐藤なるでしょうね。しかし、それは悪いことではない。日本はチャレンジされたらそれに応えます。そういう国です。また、チャレンジされないとずるずる問題を先にのばす傾向があるでしょう。極端な話、外圧を利用していい政策を展開してきた経歴がある。 飯塚現にマッカーサーによる占領と指令がなければ、農地解放は行われなかった。私は農地解放こそ日本の復興の原点だと思います。 佐藤20世紀は「アメリカの時代」だったと思いますが……。 飯塚第1次世界大戦以来はそうですね。モンロー主義を唱えて南北アメリカ大陸が自分の舞台だと考えていたアメリカが、ウイルソン大統領の理想主義で世界全体に目をむけた。戦勝国の筆頭としてね。 佐藤その「アメリカの時代」の特徴は、多国籍企業が代表するマルチナショナルの時代だと思うのです。 本誌石油会社がその代表ですね。 佐藤アメリカの場合は自然にそうなったので、日本のように「国際化」なんて言う必要がなかった。 日本は経済大国になり、アメリカの後を追って急激にマルチナショナル化が進みました。その急な変化に対応する過程の合言葉が「国際化」だったともいえますね。 飯塚なるほど。 佐藤マルチナショナルというのは、かなり一方的なものです。だからある条件のもとでは歓迎されるが、常になんらかの摩擦の要因をはらんでいるわけで……。 飯塚そうですね。それを覚悟しなければならない。いや、現に摩擦はいろんな形で出ている。それは同時に、先生が言われたように摩擦を克服してゆく過程でもある。しかし、あるところまで行くとどうでしょう。 佐藤一方的ということは続きませんよ。日本はアメリカのようにはゆかない。 飯塚アメリカでさえ限界に達している。全世界に広がった国益を守るため過大な軍備を持ったが、それが維持できなくなった。マルタ会談でソ連との冷戦に終止符をうったのはその現れでしょう。 本誌ケネディ教授の『大国の興亡』は先見の明がありましたね。 佐藤一方的なマルチナショナルは限界に来ています。そうなるとどうしても相互主義に行かざるを得ないのではないですか。 飯塚相互主義ね。 佐藤相互主義というと保護貿易主義を連想させますが、私が言うのはそうでなく、互恵主義と言い換えてもいいのです。日本古来の「お返し」の精神ですね。経済一辺倒ではなく、「日本はこんなことが出来ます。あなたの方はこうしてくれませんか」といった具合にやれば、21世紀も日本は大丈夫。日本の政治を見ていると楽観できませんがね。 | |||||||||||||