飯塚毅博士アーカイブ
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自己探求の言葉
職業会計人の行動指針

飯塚毅博士の言葉

職業会計人の行動指針-1

「畏れのない心」と「直観力」を培養せよ

会計事務所所長が、本当に成功するためには、畏れのない心と直観力とが絶対に必要であることを、否定するものはいまい。ここが問題なのである。畏れのない心とは、不安や恐怖感や迷いの心がないことを言う。直観力とは判断の積み上げを媒介としない対象把握の能力を言う。この2つが共に会計人の成功の絶対的要件であるとするならば、われわれはこの2つをどうやって手にいれたらいいのか、ここに宗教的信念培養の必要性があるのだ。会計人は税務官吏を初めとし数々の利害関係人の注視の中で仕事を進めなければならぬ。そこには無数に近い迷い、悩み、畏れ、不安の要素が絡んでいる。

会計人は日常多発する事実判断、法理判断の的確性だけが飯の種だ。

虚偽、錯誤、脱漏は、常に外面が糊塗されており、これは虚偽です、錯誤です、脱漏があります、などとはどこにも書かれていない。従って優れた会計人は、常に事物の真相を徹見できる鋭い直観力を持っていなければならぬ。この畏れのない心と直観力という、最も重大な徳目については、いったいどこで教えてもらえるのだろう。税法の中にあるか、ない。民法の中にあるか、ない。監査論の中にあるか、ない。職員に所長同様、畏れのない心と直観力とが欠けていたら、事務所は累卵の危機に立つほかはない。ここに宗教的信念培養の必要性と方法を叫ぶ所以がある。(『職業会計人の行動指針』飯塚毅著・TKC出版)

職業専門家としての気骨と決意を持て

日本では税理士試験とか公認会計士試験に合格すると、とたんに一人前の職業会計人になったと錯覚してしまう風潮があるが、国際的にみると、こういう錯覚は通用しないのだから注意してほしい。税理士法第41条には受件簿の記載義務が法定されているが、記載事項の一部省略とか虚偽記載の部分があったときは法第63条によって罰金刑が課されることになっている。言い換えれば前科一犯となってしまうのだ。ところが、日本の多数の税理士は税理士法そのものも、ろくに読んでいないので、受件簿の完全記載をやってはいない。

法令に基づく租税正義を綿密に実現してゆく為には、税務署ベッタリでは勿論なく、納税者ベッタリでもいけない、中立・厳正・独立の姿勢を堅持していかねばならぬ。この道は大変な道なのだ。例えば君に、関与先が少なく、この関与先に離れられたら、俺は餓死する他はないという時、その関与先から内密に脱税処理の依頼を受けたとする。君は敢然として相手を説得し、応じないときには断固解約するだけの気骨をもっているか。自分や妻子の餓死の危険をかけて、君は自分の職業専門家としての権威を守る決意が持てるか。持てそうもないなら、開業など考えるな。税理士というのは、本来、国家の財政需要を正しく充足しつつ、正当な納税者の権利も断固守ってゆくという、実に崇高な職業なのだ。(『職業会計人の行動指針』飯塚毅著・TKC出版)

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