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職業会計人の行動指針-2人物の大小は、利己心の強弱に反比例する発展していない会計事務所の所長に共通する特徴は、発想が常に自己中心的であることです。別言しますと、その人間性が余りにも小人物であることです。私の師の植木義雄老師から教わったところによりますと、人物の大小は、利己心の強弱に反比例するとのこと。利己心が強ければ強いほど、その人物は小さくなる、という意味です。 利己心が強いということは、ものを考えるに当って、常に自己中心的な考え方しか取れない傾向があるということです。この発想の構造を切り換えることが大発展の原理です。自己中心の発想から、関与先中心の発想への転換です。それは、利他に徹することが即ち自利なのだ、との人間の真の生きざまに通ずることだと存じます。「自利とは利他をいう」ということです。中心を関与先において万事を眺めてみますと、先生の事務所が常に関与先に対して、欲求不満の種を与え続けていることに気がついて、愕然とするはずです。この発想の切り換えをやると、間違いなく、事務所は大発展の道を歩み始めます。疑わずに、やってみて下さい。(『職業会計人の行動指針』飯塚毅著・TKC出版) 問題発見能力を身につけるあるスーパーマーケットの社長さんが、拙宅を訪ねてきました。社長さん曰く「私には、ものが見えないのです。ですから、いつも後手後手に廻っちゃうのです。どうしたらものが見えるようになるのでしょう。ご指導下さい。」というのです。経営者にとっては問題発見能力が最大の重要事なのに、誰も教えてくれない、ということでした。 「あなたは、自分の表面意識の中を、掻き回し掻き回し暮してきたんじゃないですか。そういうやり方では、ものが見えるという状態、いわゆる問題発見能力は身につかないのです」と私は答えて、話を始めたのでした。 「神光不昧(しんこうふまい)」という文字が那須の雲巖寺の山門に掲げられていますが、要は、心の光を昧(くら)まさない、ということです。それは禅の真髄を端的に表現した言葉です。心の光を昧まさないということで、ものが見えるという力、いわゆる問題発見能力が身についてくるのですが、それには相対的な意識群を断滅し切った世界を、自分の中に発見する修業が必要です。自分の中に、虚空のように澄み切った、塵一つも対象物がない世界があることを確証してみる必要があるのです。 不断に、この境地にいる工夫を積んでいると、事物の真相を洞察する力、問題発見能力が自然に備わってしまうように、人間というものはできているのです。 (『職業会計人の行動指針』飯塚毅著・TKC出版) |
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