飯塚毅博士アーカイブ
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自己探求の言葉
職業会計人の行動指針

飯塚毅博士の言葉

職業会計人の行動指針-5

担雪埋井(たんせつまいせい)

雪をかついで井戸を埋める。瞬時に雪は溶けてしまう。決して井戸は埋まらない。全く無駄なことだ。無駄なことなんだがやらないわけにはいかない。

なぜか、おのれの本具する誓願だから。おのれの生き甲斐であり、それがおのれのあるべき生活なのだから。

職員の錬成とか、関与先の指導を実践するとき、まさに担雪埋井の感を深くすることが多い。相手側から、恐れ入りましたと敬服される段階までいきたいものである。白隠禅師の言葉だといわれる。これがやれないような人物は、禅の世界では大したものじゃないとされる。会計人の世界も同じですよ。(飯塚毅著作集1『会計人の原点』49ページ)

巡回監査をやらない会計人はプロではない

私が巡回監査の実施を叫ぶのは、税理士法が原理的にはそのことを要求していると解しているからです。我々の言う巡回監査とは、職業会計人本人またはその従業員が、毎月1回以上にわたって関与先を訪問して、その会計処理を実施している現場で、会計に関する真実性を確証し、過ちがあればこれを訂正させてくることを意味しています。なぜ関与先に出向く必要があるかと言えば、もし関与先に出向かなかった場合には、会計資料の真実性が、その量と質との両面から、納税者の故意、錯誤、または過失によって減殺されてしまう危険があるからです。米独においては、巡回監査を怠ると懲戒処分の対象とされるわけですが、日本ではこの点での積極的な明文規定を欠いているばかりに、租税正義実現上の厳粛さを欠き、非職業会計人にいつでも取って代わられるほどの、社会的に低い評価水準に低迷しています。巡回監査をやらない会計人は、言葉の厳密な意味では会計人ではないのです。真実性の追及をやっていないものが、どうしてプロの会計人と言えましょうか。 (『職業会計人の行動指針』飯塚毅著・TKC出版)

「書類範囲証明書」を徴求せよ

納税者は、偽りまたは不実な記帳が税務官吏によって発見された場合、例外なくといってもよいほどに、自分の無知を装い、責任を自分以外の者、例えば職業会計人に塗りつけるという態度をとります。この点の指摘に関しては、ハリー・グラハム・ボルターという、カルフォルニアの米国租税裁判所判事で、米国最高裁判所の構成員でもある法律家の書いた『租税詐欺と脱税』を参照されるとよいと思います。その中で、納税者の問題を取り扱い、結局、事実の問題として、会計資料のどこまでを、それと知りつつ、外部の専門家に開示したのかが、責任の分岐点だといっております。そうすると、会計事務所側は、会計資料のどこまでを開示してもらったかを、納税者の署名捺印入りの文書で、もらっておく必要があります。しかも、納税者のために、「会計監査に際し、真実のすべての会計資料を整えて提供することが、納税者の責任であること」を明記した注意書きをつけておき、正副二部を受領し、正は関与先に、副は会計事務所に綴り込み保管する必要があります。それは、開示された資料の限界を示す重大なものですから、漠然とした記録は、絶対に許されません。職業会計人は、関与先とは自由契約であり、税務職員のように「質問検査権」という公権力による強制力は持っていないのですから、職員諸君を刑事責任から守り、ひいては事務所を護るためには、「書類範囲証明書」などを作っておくしか手がない、と考えたわけでした。(『職業会計人の行動指針』飯塚毅著・TKC出版)

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