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職業会計人の行動指針-7虚偽申告の経営者への刑罰法規が必要会社の経理を監査する「監査人」の立場を擁護するために、イギリスの勅許会計士法は第19条に「監査人に対する虚偽の申し立て、その他」と題する条文を設け、その第1項でこう定めている。 「会社の役員が、故意に、又は、無謀にも、次の申し立てをしたとき、即ち(a)特定の事項について、(監査人を・筆者)誤解に導き、(監査人に対し・筆者)偽り、又は、欺瞞的な申し立てを行い、(b)あるいは本条が適用される申し立てを行ったときは、犯罪を犯したものとする」と。そして、その罪として「2年以下の懲役、又は、罰金あるいは両罰を併科する」と定めている(同条第3項(a)号参照)。つまり、会社の役員の側にも、社会的責任を課して、職業会計人の責任と権衡を保つ、との法制となっているのである。 日本の現状は、会社の役員を甘やかし放題に甘やかしており、片や、職業会計人に対しては、まるで封建時代の代官的なにらみを効かそうとしている、とは思いませんか。会計記録の完全網羅性と真実性とを破る経営者には、イギリス並みの刑罰法規の制定を要求しようではありませんか。日本人固有の民族的な活力は、正しい記帳と、正しい申告納税とをしない者に罰則を課すことで、減殺されるものと考えますか。われわれは、もっと原理的に考え、われわれの行動の方向づけをしてゆく必要があるのではないでしょうか。 (『職業会計人の行動指針』飯塚毅著・TKC出版) 社会形成の原動力たる法の機能に目醒めようドイツのハンブルク大学の法哲学教授ヘンケルは、法のもつ機能というものを「社会形成の原動力」という角度で捉えております。別言しますと、社会をどの方向にもってゆきたいのか、との国家意思というか、国家の願望を叶えてゆくための一手段として、法というものを位置づけている、ということです。こういう角度の発想を、なんとかして、もっと大蔵当局や国会にもって頂いて、われわれの職業法規というものを、もっと的確に国家目的に沿った、もっと社会的権威のあるものにしてもらえないものか、と思っているのですが、あなたはいかがお考えでしょうか。 われわれの職業は自由職業なのだから、この職業の自由性を、余り拘束しないで貰いたいという、時代逆行的な考え方を、故意に流しているお方もおられます。そして、ご同業のお方には、あまり世界のこの業界の動向に目も向けず、皮相な議論に安易に賛同してしまう方が案外多いものですから、困ったものだなあ、と思っているのです。最近、頻繁に各業界の大口脱税事件が報道されます。大口脱税事件には、たいてい、税理士が絡んでいますから、そういう質の悪い税理士先生は、どしどし、ごみ箱に入って頂いて、事務所を閉鎖してもらい、業界をもっと水準の高い立派なものにしなければ、国が危なくなってしまうのではないか、と心痛に堪えないのです。あなたのお考えはどうでしょうか。 (『職業会計人の行動指針』飯塚毅著・TKC出版) <以上> |
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