飯塚毅博士アーカイブ
プロフィール植木義雄老師との出逢い飯塚毅会計事務所と巡回監査飯塚事件TKC創業とTKC全国会結成
法改正への提言DATEV創業者 Dr. セビガーとの交友研究業績飯塚毅博士の言葉著作物・講演記録
ホーム
 
追悼座談会
飯塚毅先生との出会い
飯塚毅博士と私
バンガード対談集

飯塚毅博士と私

新型間接税は論議を尽くして-2

建設業界における日米“摩擦”の実体

飯塚ところで、日米の貿易摩擦に端を発した米国の市場開放要求は、農産物だけでおさまらず、公共事業への参入要求という形で建設業界にも波及しておりますね。

年間の受注1兆円を超す鹿島建設の総帥としても、財界のトップリーダーの御一人としても対応にご苦心があると推察します。

石川日本の公共事業への参入は、アメリカが強く要望してきております。韓国をはじめとするNICS(新興工業国)、さらにEC諸国からもいろいろ希望はあるようです。

しかし、この問題には多少誤解があるので、この機会に改めて申しておきます。

日本の公共事業の発注の仕方には不透明なものがあるように受け取られていますが、決してそうでなく内外無差別なんです。外国の業者も、参入しようと思えば自由に参入できます。

ただ、公共事業は政府ないし地方自治体が発注するもので、政府・自治体が決めた法律ないし慣行があります。どこの国でもそうですね。それぞれ特色のある発注の仕方をもっている。

飯塚当然、そうですね。

石川たとえば、鹿島建設の場合、世界の40ヵ国ぐらいで仕事をしていますが、それぞれの国の法律に従ってやっています。

外国の建設会社が日本でおやりになる場合は、日本の法律その他の規定に従ってやってもらえば何等問題はないのです。

公共事業は国民の血税でまかなっておりますから、無駄や不正があってはいけない。政府や自治体の担当者が詳細に作った予算を上回ることは出来ない。これは会計法で決まっています。そして応札者の中で1番安いものに落札する。そういうルールにも従ってもらわなければなりません。

こういう基本に従えばいつでも参入できます。実は、これまでも日本で建設業の営業許可を取っているアメリカの業者は、年間400億円くらいの事業をしているのです。そういう事実をご存じなくて騒いでいるところがあります。

飯塚日本で既にそんなにやっていますか。それは私も初耳でした。

会頭は記者会見で、「日米の間にはパーセプション・ギャップがある」と言っておられましたが、まさにその通りですね。

石川パーセプション・ギャップというのは、アメリカ側がよく使う言葉ですが、当方こそ使いたいですね。

もうひとつ、アメリカ側は盛んにレシプロシティー(相互主義)ということを強調します。日本の建設業者はアメリカで盛んに仕事をしているのに、アメリカの業者は日本で仕事していない。天下に名だたるアメリカの建設業者が日本で仕事ができないのは、非関税障壁があるのに違いない。こう言うのです。

しかし、こういう問題を「相互主義」で判断して処理していいものかどうか。さきほどここ(日本商工会議所)へ訪ねてこられたある国の大使とも話したのですがね。アメリカの有力な人たちの中にも、「それはおかしい」という意見もありますし、ヨーロッパ諸国の人々は「そんな議論は成り立たない」と言っています。

飯塚一領域ごとに相互主義を成立させようなんてことは、アメリカの標榜するフリートレード(自由貿易)の原則に反しますね。

石川仮に相互主義を認めるとしても、問題はその先にあります。

公共事業を受注することは、政治でなくビジネスなんです。発注者が満足のゆくようなものを提供しなければならない。コスト、信用、さらに営業努力はどうなっているか、とか。

飯塚その企業努力を十分しないで、市場の閉鎖性を言うのは、フェアではありませんね。

石川現にアメリカの建設業者でも、その努力をしている企業はあって、かなりの商売を日本でしているのですからね。

われわれも、30年間アメリカで仕事をしています。お客様に喜んで貰い、雇用も増え、引き続き仕事を頂戴している。それには企業努力が必要なんです。

向うで然るべき人にこのことを言いますと、「なるほど」と理解してくれます。

飯塚そうでしょう。

石川いま、米国の建設会社で新しく日本に進出したい、と言うところはないのです。われわれの業界では「国際相談室」をつくり、来たければどんなことでも、ジョイント・ベンチャーでやりたければそれも、相談に乗りますよとPRしていますが、1社も来ない。来るのは大使館の人だけ(笑)。

ですから、建設業関係の日米摩擦といっても、実体は日米の建設業者同士の問題でなく、向うの政治家、それも議会のごく一部の人々の意見なんです。

飯塚それこそがパーセプション・ギャップですね。

石川一昨日までアメリカでこの問題をやっていたのですが、民間の経営者は分かってくれます。ところが、役人とか政治家はなかなか理解してくれないところがある。

飯塚日米貿易に巨大なインバランスがあるのは事実です。それはなんとかしなければならない。しかし、理にかなったやり方でないといけませんね。

据膳を食わせろ式の要求は、ビジネスの世界では通用しません。

石川われわれは競争することはやぶさかではないのです。

彼らにとって、日本は文化も違い、言語も違い、法律も契約の仕方も違う。だからやって来てもなかなかむずかしい。しかし、IBMの例に見るように、やり方次第です。

飯塚日本の建設業関係のマーケットは巨大なものでしょう。50兆円ぐらい?

石川60兆円です。GNPの2割ぐらいあります。ただ、競争はきびしいですよ。52万の業者がひしめいているのですから、利益率も一般製造業の3分の1ですね。それに技術水準も高い。外国企業はそういうことを心得た上でおいでになる必要はあります。

飯塚お話を伺って、国内のわれわれにも認識不足があると分かりました。

石川われわれのPR努力が足りないのかもしれませんがね。

前ページ  1   2   3   4   5   6   7   8  次ページ
(2/8)