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新型間接税は論議を尽くして-5毎週専門委で新型間接税を勉強本誌ところで、竹下首相は、新型間接税導入を決意しているようですが、なかなか慎重ですね。 商工会議所は、今後はどう対応されますか。 石川政府の案がまだ出て来ませんからね。政府税調が公聴会を全国で開いて国民の声を聞いている段階でしょう。自民党税調はまだ動いておりません。 しかし、来年度予算ができるとすぐ動き出すと思うので、会議所としてもそれに向けて勉強しているところです。さっき申したように、われわれも現在の税制に満足しているわけではありませんのでね。 本誌常設の政策委員会の中に税制専門委員会(委員27人)を設けられたとか。 石川そうです。全国から税の専門家、それに去年の売上税の時に強く反対した方々にも多く参加して頂いて1週間に1回ずつ開いています。 飯塚ほう。そんなに頻繁に。大したものだ。 石川第1回は大蔵省主税局の審議官から話を聞き、その後は1人15分ずつそれぞれの意見を発表して貰っています。日商は大中小企業の126万社が会員であり全産業を網羅していますから、調整が大変です。政府がもってゆこうとする経済政策と整合性をもつ必要もありますからね。 飯塚全くです。 石川政府の考えが間違っていれば、もちろん反対します。しかし、こちらが勉強しないでただ反対と言うのは一番いけません。同じ土俵の上で相撲をとる。その準備をしているのです。 飯塚売上税のときは課税、非課税で混乱しましたが、ご承知のようにEC型付加価値税のよさは前段階控除で、非課税業者扱いされると却って困るんですね。 そこで、イギリスではほとんど全面的に納税義務者にしておいて、非課税のところは税率ゼロにしている。これは仲々うまいやり方だと思いますよ。 石川これから国民の老齢化が進むと福祉にそれだけ金をかけなければならない。それはよく分かりますが、税制と福祉政策は分けて考えなければいけない、と思うんです。 だから税をかけるところには例外なくかける。食料品だってかけてよい。いまや乞食が糖尿病になるというほどの飽食の時代ですからね(笑)。 全部かけて、その代り生活保護者とか老齢の人は別に保護する。そうすればすっきりします。 飯塚そうです。 石川税調の幹部からいろんな意見が出ていますが、問題のある点もかなりあります。 飯塚小倉会長は偉い人だと思いますが、もともとは農林水産省でしょう、次官をやられたのは。政府税調を長年やっておられるから違って来ているとは思いますが、税についての基礎的な下地が違うから、私なんかにはズレがあると映ります。 それに、大蔵省は意外に比較税法学的な勉強をしていないんですよ。 石川うむ。 飯塚イギリスはどう、アメリカはどう、ドイツはどうかということを、精密に調べていません。私は会計人になった早々からその方に関心を持ち、ずっと調べて来ているのですが、日本は遅れてしまったなあ、とつくづく思います。 その点、日商は大したものですね。30人近い委員を集めて毎週1回勉強されるとは。 石川そのくらいやらないと間に合いませんから。 飯塚さっきシャウプ税制がお話に出ましたが、シャウプ勧告は私が会計事務所を開いてから3年後で、あれで日本の税制がガラッと変わった。鮮明な記憶があります。 石川そう。戦後税制の基本はあそこで決まりました。 飯塚あのとき、この日商本部に全国の商工会議所の代表を集めたことがあるのです。 当時、私は栃木県鹿沼市の商工会議所の税制委員長でしてね。代表でここへ参りました。 石川ほう。 飯塚その時、私は国税庁長官に質問しました。 「あなた方は申告相談実施要領という通達を税務署に出し、税務署はそれに基づいて納税者に申告書を送達している。しかし、国会はいつ法律にかわる規範制定の権限をあなた方に与えたか」と。 国税庁長官は答えられませんでした。答えられないはずなんです。申告書を送達する根拠はないんです。 本誌さっき、「日本には納税義務者を掌握する法律の条文がない」と言われたのはそれですね。国税庁長官はなんとも答えなかったのですか。 飯塚そう。会合が終わったあとで私の肩をポンとたたいて、「君、時には遊びに来たまえ」なんて言っていた(笑)。 それはともかく、「トーゴーサンピン」とか「クロヨン」といった不公平の根を辿ってゆくと、この納税義務者把握のルーズさに行き着くのです。 会頭、ひとつ、こういう点を是正して下さい。これは私の3番目の直訴です。 石川それはこちらじゃなくて、向うへ言って貰わないと(笑)。 飯塚それがだめなんです。きょうも民社党から税の問題で講義してほしいという申し込みがありました。私は自民党でも野党でも頼まれれば出掛けて行って、いま申したような日本の税制の欠陥について懇々と説いているのですが、議員の先生方はその場で感心してくれても、一向に動いてくれない(笑)。 会頭のような心あるリーダーに発言して頂かないと。 石川いや、やはり会長のような大専門家が適任ですよ。 それにしても、日本の税制は性善説に立っているのですね。 飯塚その通りなんです。 世界各国どこでも、「これ以上の収入があるときは、課税所得のあるなしにかかわらず申告しなさい」となっているのです。アメリカなら、現在は年間1,080ドル以上です。 日本は所得税法120条がそれに対応します。ところが、非常にわかり難い条文を一言でいいますと、「所得があったと考える人は申告しなさい」ということに帰着します。 石川やはり性善説だ。 飯塚そうです。それがある程度機能しているから、年間50兆円の予算が組めるわけです。 しかし、そのために脱税が横行していることも事実です。税制の抜本改正を言うならば、直間比率の見直しもありましょうが、その前にこうした根本的な欠陥を考え直して頂きたいのです。 | |||||||||||||