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新型間接税は論議を尽くして-6

課税はあくまで筋を通して

飯塚こういう得難い機会ですから、ただいまの通達の件について、もう少し補足させて下さい。

石川貴重なご意見です。お聞かせ下さい。

飯塚戦前のドイツには通達制度があったのです、大蔵大臣とかに。法の欠陥ないし空白部分を埋めるためですが、しかしそれは「厳粛に正義にかない見識のあるものでなければならない」という条文で制約されておりました。

石川ほう。

飯塚だが、この通達制度でさえ戦後、廃止されました。現行憲法――基本法といいますが――の129条第3項により、国会で承認された法律でなければだめということになったのです。

日本では国税庁長官が、部下としかるべく作った通達が納税者をしばっています。しかも、それが膨大な数です。

石川ふむ。

飯塚国家行政組織法の第14条で省庁の長は通達を出す権限を与えられていますが、それはよく見ると拘束できるのは部下だけです。国民は拘束できません。

ところが税務署は、国民に「通達がこうなっているから」と来るのです。これはおかしいですね。

本誌税金という国民の重大問題に関して、法にすき間があるわけですね。「代表なきところ税金なし」という古典的な言葉がありますが、極端にいえば、日本国民は国税庁に生殺与奪の権を握られていることになる。

もっとも、税務署の応対はソフトで、お役所の中では仕事柄にもかかわらず評判がよい方ですが。

国民も税務官庁も、ともに性善ということでしょうか(笑)。

飯塚そう言って済んでいるうちはいいですがね。

私の経験したことですが、東京国税局から調査に来て、申告が間違っていると更正決定予告がありました。

顧問弁護士たちも、監査担当者も、「やむを得ない」あるいは「課税されるのは当たり前だ」という意見でしたが、私は納得できなかったのです。なぜか。それが、ただいま申しました税法と通達のギャップの問題だったのです。細かくは申しませんが。

結果として更正決定はとりやめになりました。

石川ほう。

飯塚私は税金を逃げたいからそういっているのではありません。私ごとで恐縮ですが、中元、お歳暮の類いも私はお金に換算し、収入として申告しております。

課税する方も、ただいま申しましたように、あくまで筋を通してもらいたい、と要求しているだけです。

法の不備のために課税すべき性質のものに課税できないのなら、そこを法律で手直しするなり補うなりすべきなのです。現に私の指摘を採用して法令が修正されたケースも幾つかあります。

日本商工会議所が専門委員会に、売上税のときの強硬な反対者を多く入れて、来るべき新型間接税の検討を進めておられることは、そういう意味で敬意を表します。

石川おっしゃる通り、筋は通さなければいけませんからね。

年頭の記者会見でも申しましたが、自民党が数の論理だけで決着を急ぐのはいけません。21世紀以降を目ざし、税制の不公平、不公正を是正してゆくという観点に立って、国民的レベルで方策を選択すべきだと思います。

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