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(写真出典:飯塚毅先生追悼集『自利トハ利他ヲイフ』386頁)
新型間接税は論議を尽くして-4
戦時臭ぷんぷんの保険金課税
飯塚そこで、石川会頭にこの際、直訴を聞いて頂きたいのです。
政府は「税制の抜本改正」と言っていますが、「抜本」という言葉の使い方を誤っています。つまり、法人税や所得税を減税するための媒体として直接税・間接税のいわゆる直間比率を是正する――そういう角度でしか抜本改正を考えていない。
そこに基本的な問題があります。
石川もっと具体的に伺いたい。
飯塚直間比率是正を言う前にやるべきことがあるのです。それは納税者の掌握ということです。
日本の税法には納税有資格者――納税義務者を政府が積極的につかむという条文がありません。西ドイツでは、国税通則法の中に、その関係の条文が6ヵ条ありますよ。
だから、東京国税局管内で、申告書を出すべきなのに出さないのが2万8,000件もあると発表された。そんなことが起こるのです。
不公平是正を言うなら、そして財政収入が将来心配というなら、まず納税者を正確に把握せよと言いたい。これは大きいですよ。
石川なるほど。
飯塚もう1つ、現行税制で、いま申したような原則の話ではありませんが、どうしても見逃せない不合理があります。
会頭も生命保険に入っておられると思いますが、死亡して保険金がおりた場合、いま相続人1人あたり250万円しか非課税にならず、あとは所得として課税されます。これはひどいですよ。
広田弘毅内閣の時ですから、昭和12年から13年にかけて……。
石川広田内閣は短命でしたね。
飯塚戦争が中国本土に拡大して、あの時、臨時軍事費拡大の必要があり、この悪税を財源の1つにしようとしたのです。大蔵省は抵抗しました。世界各国ともそんな税金はかけてないし、日本もずっと非課税でやって来た、と。しかし、軍部の要求で強引に課税させられてしまった。それが今日に続いているわけで、この税は戦時臭ぷんぷんですよ。
もう少し申し上げると、当時はそれでも課税されたのは5,000円以上の保険金だけです。今の5,000万円くらいでしょう。それが現在は250万円以上ですからね。こんなことも日本だけです。ドイツもアメリカも、いや文明国はどこも死亡保険金には課税していません。その保険金を年金で貰うときには課税されますがね。
石川そうですか。
飯塚商工会議所傘下企業の経営者も、相続税では相当悩んでいるでしょう?
石川事業承継が出来ない、と訴える会員の方がかなりいますね。昔からの老舗で、おやじさんが死ぬと、土地評価額が高く、従って相続税が高いから土地を手放さねばならない。すると地上げ屋が来る。そして、1画が欠けて町が成り立たなくなるんですね。
これは、おっしゃるように十分検討しなければならない大問題です。
ご指摘は一端かと思いますが、問題点はたくさんありますね。
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