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(写真出典:飯塚毅先生追悼集『自利トハ利他ヲイフ』386頁)
日本人のユニークさを検証する-4
非日本人の代表=中国人とインド人
飯塚お隣の中国人については、「非常に非日本人的だ」と書いておられますね。
たしかに、原理・原則を大事にする点、抽象的な思弁に長ずる点、日本人とは対照的だと私も思います。
クラーク中国人は厳しい合理主義者です。ある意味では欧米人以上に。とくにシンガポールや香港の若い中国人の割り切ったドライさは凄いですよ。
しかし全体として中国のイデオロギーは、2,500年前の封建時代のイデオロギー、すなわち儒教が脈々として続いています。
飯塚日本は中国のイデオロギー文化を取り入れました。儒教はその大きなものです。
クラークそれが日本固有のムラ文化を洗練した。それが日本の強さになっています。会社に対する帰属意識がそうですね。あれは秀れて封建的。会社は藩で社長は殿様といっていいでしょう。
飯塚なるほど。
もっとも、私は殿様意識はないつもりですがね。責任感はありますが(笑)。
クラークそれが洗練された封建的意識なんですよ。
中国人は合理主義者といいましたが、いまアメリカで優秀な学者、とくにコンピュータ関係は、中国人が多いですね。
本誌日本でも東大、東京工大、早稲田、慶応、東北大――めぼしい大学で、1番はみな中国人だそうです。
クラークインド人も、チャンスがあればなかなかやりますよ。
飯塚インド人も、非日本人的ということでは相当のものでしょう?
クラーク対照的ですね。インド人はヨーロッパ人より合理主義者です。
私のオクスフォード大学時代、ディベイティング(討論)・クラブの会長は3年つづけてインド人でした。かれらの議論好きはイギリス人の上をゆきます。
日本人は議論するの下手でしょう。
飯塚下手です。そもそも講論すること自体が好きじゃない。
インドは民族が130ほどあり、言語が違うから、同じインド人同士なのに英語を使わないと意思疎通できないそうですね。
クラークそうです。
飯塚20年ほど前、東京の電車の中で話し掛けてきたインドの青年が、「バガバドギータを知っているか」と尋ねる。インドの古典の1つだそうです。「知らない」と答えると、「帰国したら送ろう」と約束し、その通り送られてきました。
読んでみると凄い哲学理論でした。私が禅という形で親しんで来た仏教も、その核心は徹底した思索の結果、生れた哲学です。
クラーク飯塚先生の仰言る通りです。
いまや全世界を席巻している感のある日本的経営も、インドではだめです(笑)。
さっき申したような日本との共通性から、北ヨーロッパでは意外に成功しますがね。イギリスでのように。
本誌岡倉天心が唱えて以来、「アジアは1つ」というのが日本人の常套句になりましたが、クラークさんのお話を伺っていると、よく検証しなければという気になります。
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