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日本人のユニークさを検証する-7

決定的だった地理的条件

クラーク最近ある学者の本で教わったのですが、天皇という言葉は中国の道教から来ているそうですね。古代には仏教と並んで道教も入っていた。

飯塚そうなんですよ。

昔はそんなことを発表すると弾圧されましたが、いまは自由に研究し発表できますからね。遠慮会釈なしに。

私も最近、面白い本を読みました。

朝鮮に『桓檀古記』という本があります。向うの古代史4種の文献を、明治44年に合わせて成立したそうです。これを鹿島昇という歴史学者が日本語に翻訳し、6年ほど前に出版されました。

これを読むと、天皇家のルーツが朝鮮半島にあることがはっきり分かります。神道のルーツも同様です。さらに面白いのは、中曽根前首相はじめ百数十名の国会議員がこの本を推薦しているのです。

クラークほう。

飯塚そんな具合に古代日本の支配階層は外から来ている。

もっとも、英国の場合はさらに徹底していますね。土着のケルト人をローマ人が征服し、ローマ人が撤退したあとアングロサクソンが入って支配勢力となり、つぎにノルマンの征服があった。何層もの征服、被征服の関係ですね。

クラーク仰言る通りです。そこからイデオロギーが必然的に発生しました。

飯塚王権神授の思想とそれに対抗するマグナカルタ(大憲章)。その相剋の中から議会制度が形成された。

クラークその名残が今も色濃い階級性です。日本は、ヨーロッパと同じく封建制を経験したのに、階級意識がありませんね。これは驚くべきことです。

やはり、他の民族と深刻な戦争をせず、自然に発展したから、無理にイデオロギーをつくる必要がなかったからでしょう。

日本は丁度いい具合に大陸と離れていましたね。人間と文化は流入するが、わざわざ海を渡って征服に来るには億劫な(笑)。

飯塚例外は人類史上最大の征服者、フビライですが、2回も襲って来ていずれも完全な失敗。さすがの彼も諦めた。

先生はその地理的条件をとらえ、地中海のクレタ島で栄えたミノア文明と日本文化の同質性を指摘しておられる。

実にスケールの大きい比較文明論だ。

クラークご存じのように、クレタ島は最近、日本人観光客に人気のあるエーゲ海の南端にあります。ここに紀元前3000年ごろから高度の文明が栄えていました。

ミノア人の先達は、海を越えたエジプトでした。

しかし、何百マイルの距離の御蔭でエジプト文明に隷属せず、独自の文明を発展させたのです。

結論だけ申しますと、その地理的条件とともに、文明の性格が日本と非常に似ていると思われるのです。

ミノア文明は紀元前1520年、近くのテラ島の大爆発の影響で壊滅的打撃を受けました。その点は日本と違いますが。

レプチャ語、ミノア文明、バリ島

飯塚故人ですが、安田徳太郎という歴史学者が、日本語とヒマラヤ山中のレプチャ語の類似を指摘しましてね。評判になったものです。

万葉集で読解不可能な部分も、レプチャ語と付き合わせると分かるというんです。

当時はまゆつばとされたのですが、その後、東南アジアから中国南部を経て日本に伸びる照葉樹林文化帯がクローズアップされ、民俗的にも類似があるということになった。

本誌万葉集といえば、古代朝鮮語で読み解くと、謎とされていた部分も解ける、という素人の研究をNHKが取り上げ、テレビで紹介していました。

柿本人麿に次ぐとされる万葉の歌人、山部赤人も朝鮮から来た。裏付けもあると。

飯塚そうなんだ。

クラーク面白い話ですね。

私がミノア文明を取り上げたのは、さっき申したように、日本との地理的条件の類似性ですが、現存のもので日本文化と類似が多いのは、インドネシアのバリ島ですね。

本誌あそこも日本人観光客に人気があります。

クラークインドネシアは回教国ですが、あの島だけはもとのヒンズー教なんです。それが土着の文化と融合して、日本の神道に似たものになっている。

封建時代も経験していて、サムライに似た階級もあった。そして、植民地にしようとするオランダに抵抗した時、3,000人の戦士が切腹しているのです。

飯塚ほう。ミノア文明と違って、バリ島の方は日本と関係があるかもしれませんよ。黒潮に乗って……。

クラークインドネシア人は、日本人と似たところがあります。義理人情とかコンセンサスを大事するところとか。

本誌ミクロネシアやポリネシアも黒潮でつながっている可能性がありますね。

飯塚そんな風に、日本人のルーツは南、北、そして西はユーラシア大陸の奥深くまで辿れるのですよ。その多様性から多様な可能性が出てくるんだ。

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