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(写真出典:飯塚毅先生追悼集『自利トハ利他ヲイフ』386頁)
日本人のユニークさを検証する-6
日本人は多民族の複合
飯塚最初に申し上げたように、『日本人――ユニークさの源泉』も、『ユニークな日本人』も、この著者にしてこの著書ありということがよく分かりました。
ただ1つ、隴を得て蜀を望む類のおねだりを許して頂くとすれば……。
クラークぜひお聞かせください。
飯塚もっと詳しく言及してほしかった点があります。
それは、一般の常識に反して、日本が典型的な複合民族であるという事実です。
つまり、日本に国家が成立する以前の古代に、何十という種族なり民族がここに流れついたのです。大陸と繋がっていた時には歩いてこの先端に来たでしょう。
中曽根さんが、首相のとき、「日本は単一民族。それに対してアメリカは」と、例の失言をしましたが、認識不足も甚だしい。日本は真にアメリカに負けない複合民族国家なのです。
ただ、平安朝以来、新しい流入がなく、みんなでこの島国に安住してきましたから、いわゆるホモジーニアスな民族になったとされますが、多民族から成ったという本質は、いまでも作用しつづけています。
クラークなるほど。それは、日本人のユニークさの謎を考える時、多くのことを説明してくれそうですね。
私があの本を書いたのは10数年前で、知識が不充分でした。とくに古代史についてはその感があります。
例えば、あのころから古墳が続々発掘されて、日本と朝鮮の古代における密接な人的交流がいよいよ明らかになりましたね。
私も関心をもってそのニュースを読みましたから、いまは飯塚さんが仰言ることの意味がよく分かります。
飯塚先生は、日本の前途について注意を促しながらも、楽観的であるとお見受けしました。それは当たっています。
なぜか。
その答えは、いま申した多民族が複合したところからくる強さです。
クラークその多民族の複合体が、ホモジーニアス――同質あるいは同一性――といわれるほどに融合し、ムラ的な人間関係社会を形成したのが、また不思議ですね。
飯塚そうです。
例えば、中国と比較したって、日本人の方がはるかに外来文化の消化力があります。
本誌中国人の欠点は中華思想が強く、外来のものを排斥する傾向があることです。
クラーク中国人だけじゃない。どの民族でも、国家でもその傾向があります。
こんなに外来文化を取り入れるのがうまいのは日本人だけですよ。
飯塚ずばりそうです。先生のお説のように、日本人は外国人は排斥するが、外国の文化は虚心に摂取する。
クラーク外国ではその逆です。
人は入れても、文化はなかなか入れない。それがアイデンティティーになっている。
それに対し、日本国家のアイデンティティーは、文化より人なんです。濃密な人間関係で相互に結ばれる。外国人にはそれがなかなか見えない。
いままで、それを説明するのにいろいろ試みられました。「恥社会」、「タテ社会」、「ホモジーニアス社会」、「運命共同体」、あるいは「甘えの構造」等々と。
それぞれ当たっていますが、部分的で……。
飯塚そう。
そこへゆくと、先生のお説は、パーッと網をかけて、一貫した、また普遍性のある説明になっています。温存された部族社会の人間関係というのは。
クラークそこから日本独特の企業経営も生まれるわけです。
ちなみに、わが家の経営も全く同じですよ。妻には終身雇用、子供には社内訓練と年功序列。しかも中途採用はやらない(笑)。
飯塚ハッハッハ。まことに日本的。
それにしても、先生は逆転の発想がお得意ですね。
本誌そこへゆくと、飯塚会長の古代探究――というより日本人のルーツ探究は、ぐいぐいと正攻法ですね(笑)。
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