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漢方-4
これからの医療文化

年相応に老けた顔がいい

最初申しましたように、古代中国では医療は契約制でしたから、医者は王侯を一目見ただけで病気が治るか治らないか、どのような経過で治るか、当てなければならなかった。

飯塚それは大変だ。

そこから人相見が発達した(笑)。なにしろ、治療に当たるべきかどうかを決めなければならない。命がけの仕事でしたから。

とはいっても、人相見は直観ですからね、分かることは分かる(笑)。戦後の歴代宰相を思い浮かべて顔の皺の少ない順に並べると田中、大平、池田、中曽根、佐藤、三木、福田、岸、になるでしょう。この順番で何か分かりますか。

飯塚いや。

寿命です。政治家としての寿命も含めて。

飯塚なるほど。

皺の多い人ほど長持ちしていますね。これからも分かるように、50を過ぎてあんまり肌の艶がよかったり皺がないのは、逆に問題なんです。年相応に老けているのが良い――これが日本の漢方の考え方です。

各界の物故者の写真を年齢順に並べてご覧になれば、一般の人の考えている健康と寿命とは実際はかなり違うことが分かります。

飯塚そうですか。驚きました。

私は30年ほど前、漢方医に診てもらったことがある。彼は私の脈をみただけで、「あなたは今日、卵を2つ食ってきた」と当てました。驚きましたね。

こういうこともありました。上半身裸にして胸にさわり、「あんた肋膜やりましたね」と。肋膜炎に罹ったのは8歳の時のことなんです。これも驚いた。漢方医は不思議な眼力を持っているんだなと。これを見立てに命をかけた伝統の名残りですかね(笑)。

美味いと思うものを多種少量食べる

よく玄米食がいいとか何々食がいいとか言いますね。そうした本もたくさん出ている。しかし、漢方ではそういう考え方はしません。

飯塚ほう。

今流にいうと、バランスよく多種を少量ずつたべるのがいい。

飯塚私が薫陶を受けた那須・雲巌寺の植木義雄(ぎゆう)老師は全くの菜食でした。肉も魚も卵も食べない。それで97歳まで生きました。

だが、統計的に見ると禅の坊さんは平均寿命が短いのですよ。40歳代じゃないでしょうか。その中で生き残った人が長寿を全うするのです。老師は菜食が体質に合っておられたのでしょう。

飯塚とにかく、少量ずついろんなものを食べるのがいい、というのは肝に銘じておきましょう。

特に高血圧の家系の人は、なるべく良質の蛋白を少量ずつ定期的にたべなければいけません。

飯塚私の学生時代の恩師勝本博士は94歳。別荘に招待されて四方山話で健康の秘訣を尋ねたところ、「美味しいと思うものを少したべるんだ」と仰言っていました。

それは最高ですね。食の基本は楽しむことです。食と薬の違いはそこです。薬は楽しくなくても飲む。食事は楽しくなければ食事じゃない。漢方では医食同源あるいは食薬一如といいますが、そこに区別があります。

飯塚なるほどね。

ところが、漢方を聞きかじった人はえてして、何々食というのを無理して食べたりしています。これは本末転倒です。

飯塚新聞の死亡欄を見ていると、意外にお医者が若死にしていますが、これは?

やはり西洋医学が未熟だということの1つの現れでしょうね。西洋医学は学問としてまだこれからなんですよ。伸びる要素は大いにあります。漢方から栄養を吸い取ってもっと大きくなるといいのです。

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