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漢方-9
これからの医療文化

癌治療にも併用が広がる

本誌高血圧に対してはいかがですか。

高血圧症は遺伝だけでなく、その人の生活歴、生活態度と深い関わりがありますから、簡単には言えませんね。

本誌例えば、血圧降下剤を飲んでいる人が、それをやめて漢方薬に切り換えることは出来ますか。

具体例で申しましょう。5年くらい降圧剤を飲んでいた人で、調子はよくなったが疲れた時にめまいや立ちくらみがする。そんな時たまたま血圧を調べたら下がり過ぎていた。こんな強い薬を一生飲むのは不安だと、私どもの所へきました。

診察の結果、この人には西洋薬を中止し、黄連解毒湯を飲んでもらいました。この処方は黄連、黄苓、黄柏、クチナシが配合されています。じっくり飲めば本態性高血圧――原因が分からない高血圧の総称です――に伴ういろんな症状を改善する効果があります。

飯塚降圧剤と漢方を併用することもありますか。

いま申した人は、降圧剤が日光過敏症を引き起こしている可能性が考えられ、高血圧も中程度なので漢方だけに切り換えたのですが、普通は食事療法などと並行しながら、段階的に降圧剤を減らします。漢方薬は血管を押し拡げて血圧を下げるのではなく、末梢の血管にまで血液を行き渡らせる作用があるのです。

飯塚その場合の薬の名は?

高血圧の人は割合と体力のある人が多いので、三黄瀉心湯、防風通聖散(つうしょうさん)、大柴胡湯(だいさいことう)、柴胡加竜骨牡蠣湯(ぼれいとう)、桃核承気湯などです。高齢者で体力が弱っている人には釣藤散(ちょうとうさん)、八味地黄丸、半夏白朮(はんげはくじゅつ)天麻湯などが用いられます。

飯塚外国人も漢方治療に来ますか。

日本語が出来ない外国人の患者さんも増えていますね。なぜ漢方を求めるかときくと、ヨーロッパでも生薬による治療法があるからという返事が多いのです。

飯塚向こうではハーブといいますね。

それだけでなく、日本の経済力の高まりが背景にあると私は見ています。

飯塚経済力に対する敬意が医療文化の1つである漢方に目を向けさせた?

そうです。面白いことに欧米人は首が凝るのですね。でも来日3年目位になると肩懲りを訴える人が増えます。このような場合は日本人と同じく、葛根湯(かっこんとう)や桂枝加朮附湯(かじゅつぶとう)が効くようです。

飯塚癌に対してはどうですか。

現代医学と漢方の併用をお勧めしています。それが最もよい結果を生む可能性が高いからです。

10年ほど前から、末期患者や手術後の患者に使ったところ予期せぬ効果があった、という報告が大学病院を中心に発表されるようになりました。初めはごく末期の患者にだけ漢方治療をおこなっていたのですが、次第に化学療法や放射線療法の副作用防止や手術後の全身状態の回復へと適応が広がってゆき、今では相当早期から西洋医学と併用されるようになっています。

使われる処方は小柴胡湯、十全大補湯、補中益気湯などです。

飯塚素晴らしい話ですね。

総論から懇切な各論まで、先生のお話にはインパクトがありました。西洋医学と漢方を車の両輪として発展させてゆけば日本の医療文化の前途は明るい。私も同感です。益々のご活躍を期待しています。

症例別漢方薬リスト

  • 肥満症
    防風通聖散・防巳黄耆湯
  • 糖尿病
    八味地黄丸・大柴胡湯  白虎加人参湯
  • 肝機能障害
    小柴胡湯・大柴胡湯  柴胡桂枝湯
  • 高血圧症
    柴胡加竜骨牡蠣湯  黄連解毒湯・七物降下湯  釣藤散
  • 疲労倦怠・食欲不振
    清暑益気湯・人参養栄湯  小建中湯・六君子湯
  • 術後の体力低下(癌などの手術)
    八味地黄丸・五積散  疎経活血湯・薏苡仁湯

  • 乙字湯・当帰建中湯
  • 頻尿・インポテンツ
    五淋散  牛車腎気丸・清心蓮子飲  桂枝加竜骨牡蠣湯

(編集主幹・木場康治)
(VANGUARD 1990年3月号より転載)

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