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(写真出典:飯塚毅先生追悼集『自利トハ利他ヲイフ』386頁)
教育の根底に“宗教的心情”を-3
いじめに耐える力を子に与える
松原もう少し具体的に現実に即して考えてみましょうか。
いま、教育問題というといじめがクローズアップされていますね。私は現場を見ていませんが、振り返ってみると、私なんか、小さい時は仲間からたたかれてキズだらけになったものです。そして家へ帰っても、言えば叱られるから黙っていました。そんな中で成長したように思います。
飯塚昔もいじめはありましたね。いまのように社会的に騒がなかっただけで。
松原私は子供の頃、先生からもいじめられました(笑)。
私の息子の場合もそうで、先生から「自分は坊主は大嫌いだ。坊主の子にろくな奴はいない」といわれて、帰って家内を「お母さん、なぜ寺にお嫁に来たの」と責めたそうです。
息子が胎内にいたとき、家内が腹膜炎にかかり、医者から「おなかの子をおろしなさい」といわれました。私も家内の両親も、医者の言葉に従ったのですが、家内はどうしても承知せず、息子を生んだのです。
飯塚ほう。「母は強し」ですね。
松原家内は息子に責められた時、はじめてそのことを話しました。そして、「私は観音さまに、私の命にかえて生ましてくださいとお祈りした。それで生まれたお前だから、お前は立派な人になるのです。先生のいわれることは気にしないで」と諭したのです。息子はそれでホロッとして、危機を切り抜けました。
だから、いまでも息子は驚くほど家内を大事にしています。しかし私の方には「おやじはおろせと言ったそうだね」と風当たりが強くて(笑)。
飯塚なるほど。「父母恩重経」を絵にかいたようなお話です。
松原いじめられても耐えてゆく。そのもとになるような何かを親は子どもに与えておかないといけませんね。そうでないと、時には、そのまま暴走して、極端な場合は最近報道されているように、自殺まで行ってしまいます。
飯塚おっしゃる通りです。
実は、私も小さい時はいじめられた方でして……。
松原いじめた方じゃないですか(笑)。
飯塚いや、虚弱児童というやつだったんです。校医が「この子は運動会に出るのは無理だ」というので、小学校では1年から6年まで運動会には出番がありませんでした。
松原私は体操がいつも丙でした。跳び箱はついに出来ませんでした(笑)。
飯塚私のそういう小さい時の経験の反動でしょうかね、私は長男をきたえにきたえたのです。叱る時は庭に連れ出して木刀でしりをなぐりました。長男は、だから、まず私にいじめられたわけですが(笑)、ふるえながらも歯をくいしばって耐えていましたよ。家内がそばから「もう堪忍してやって下さい」というまで(笑)。
植木老師には「父巌なれば子孝なり」という古語を教わりましたが、私はそれを地でいったようなものです。幸い息子はまことに親孝行で(笑)。
本誌これで父母恩重がそろいましたね(笑)。
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