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城山三郎氏はその著『賢人たちの世』で、椎名悦三郎、前尾繁三郎、灘尾弘吉の3氏を戦後政界の3賢人として顕彰しました。現在の政界でその後を継ぐのは後藤田正晴先生を措いてないでしょう。自民党長老として政治改革にかける情熱、自衛隊海外派遣は慎重にという直言が国民の共感を得ています。今日は「日本の進路」をめぐってご討論をお願いしますが、飯塚毅TKC全国会会長は持論を陳情する好機としても期待しておられます。よろしくお願いします。(木場康治本誌編集主幹の挨拶から)
自衛隊海外派遣は慎重であれ-1対談者(敬称略・順不同) (ごとうだ・まさはる) 大正3年、徳島県生まれ、昭和14年、東大法学部を卒業、内務省に。防衛庁初代防衛課長、自治省官房長などを経て44年、警察庁長官。47年、田中角栄首相に請われて内閣官房副長官。51年、衆院選挙で初当選。大平内閣で自治相、中曽根内閣で官房長官。自民党選挙制度調査会長を2度。竹下派が田中派から独立してからは派閥を離れ長老に。リクルート事件後、政治改革委員会会長になり政治改革大綱をまとめる。著書に『私の履歴書』(日本経済新聞社)『政治とは何か』(講談社)など。 「カミソリ後藤田」はちと迷惑飯塚先生は超多忙の中、お時間を頂いておりますので、単刀直入に陳情させて頂きます。私は税理士で公認会計士ですが、公認会計士が余りにも少なくて困っています。 後藤田それはギルド組織がきつ過ぎるためじゃないの。試験制度のせいでしょう。公認会計士に合格するのは容易じゃない。なんでそんなに難しい試験をやらせるのか。 飯塚そうなんです。ドイツの場合は公認会計士法、税理士法によって生涯に3回しか受験できないことになっています。ところが日本では制限がなく、私の仲間の公認会計士で10回目に通ったという人がいます。 後藤田弁護士もそうでしょう。司法試験がそうだもの。 飯塚平均6.5回だそうです。 後藤田そうらしいね。司法試験に合格しても判事、検事にならず弁護士志望が圧倒的に多い。司法試験に通るまでに年を食うので一番上のポストにゆくまでに定年になってしまうから、判事・検事にならないんだ。 選ばれて公認会計士の資格を獲得した人は仕事は忙しいだろうが、その代わり左団扇では?(笑)。しかし、あまりにも狭き門になり過ぎているのは問題だ。 飯塚そこまでご認識頂いているのは心強い。先生のように大所高所から見ておられ、影響力のある方がぜひ改革の音頭をとって下さい。先生は畏れられていますから。 後藤田それが困るんだ。だって代議士は何万人もの人から支持を得なければならんでしょう。それが「カミソリ」なんて言われては政治家として落第だよ(笑)。 飯塚いや、先生は違う。 後藤田そうですよ。政治家は「どなたでもいらっしゃい」とゆとりのある受けとめ方が出来るんでなければいけない。カミソリだったら、触られると切られるんだから。 飯塚ハッハッハ。カミソリというのは喩えであって、瞬間的に物ごとの本質をつかむ先生の抜群の力量をいっているのですよ。 後藤田いやいや。 飯塚とにかく、公認会計士が少な過ぎます。士補をいれて1万人。人口が半分のイギリスの10分の1です。一方、日本の産業が優秀だから経済は発展し、開放の時代を迎えています。会社の数を見ても、ドイツは有限会社が6、7万で株式会社は2,000弱。日本の株式会社は100万を超えます。 後藤田それは税制の関係もある(笑)。 飯塚公認会計士試験は大蔵省が握っています。先生は旧内務省のご出身ですが、官僚世界の頂点に立ち、立法にも通暁していらっしゃる。ぜひ、影響力を行使して下さい。 | |||||||||||||